2017 Fiscal Year Annual Research Report
津波攪乱域に新規に出現した稀少植物群の保全遺伝学的研究―地域固有性の解明と保全
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16H04733
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 助教授 (40228945)
山城 考 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (50380126)
藤井 俊夫 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80301810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子資源保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の東日本大震災では1000年に一度ともいわれる大規模な津波は,東北地方太平洋沿岸域は大面積の地表面攪乱を生じさせた.その結果,人的被害だけでなく,この地域の生物相にも大きな被害をもたらした.その一方で,津波による攪乱を受けた環境に全国的に稀少な植物種の大規模集団が新たに生じたケースが見られる.本研究課題は,通常では個体数がわずかで調査困難な稀少種を材料とし,希有な大規模攪乱が稀少植物にもたらす影響のケーススタディとするとともに,これらの新たに生じた稀少植物種群の由来とその遺伝的多様性の地域固有性を明らかにし,遺伝的多様性維持の観点に基づいた効果的保全策を考案することにある. 本年度は,昨年に引き続きチャボイに関する解析を進めたほか,アズマツメクサを対象とした研究を進めた.チャボイについては,前年のデータについて,同じクローンのラメットが含まれている可能性があったため,核マイクロサテライトによる再解析を行って,クローンベースの遺伝的多様性の推定,集団構造の解析を行った.津波浸水域に新たに生じた集団は,遠隔地からの長距離散布に由来する場合と埋土種子から成立した場合の2通りある場合が示唆された. アズマツメクサは,津波浸水域および国内の広い範囲からサンプリングを行い,核マイクロサテライトによる解析を行った.チャボイと比較すると,アズマツメクサには集団内・集団間の遺伝的変異が乏しく,津波浸水域と本州の他の集団との間にはっきりとした遺伝的分化が見られなかった.また,チャボイで見られたような新しく生じた集団の方が遺伝的多様性が高いという傾向も見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チャボイに関する解析の精度を高め,投稿論文を執筆できるレベルまで進めることができた.また,アズマツメクサについては,おおよその解析を終えることができた.サンプリングについてはおおよそ予定通りに進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
アズマツメクサの解析から分かるように自殖性が高く,長距離散布が生じやすい植物については,はっきりとした傾向が見られない可能性がある.来年度に研究対象とする種としては,アオヒメタデを最優先にすべきと考えられた.
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