2017 Fiscal Year Annual Research Report
Functional role of the ribosomal stalk protein in translation recycling
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16H04741
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
内海 利男 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50143764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 周一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10252222)
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20502397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子生物学 / 翻訳 / 蛋白質合成 / リボソーム / 翻訳リサイクル / ABCE1 / Rli1 / ストーク蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、翻訳リサイクル反応におけるABCE1とリボソーム蛋白質“stalk”間の機能的相互作用機構を解析する。平成29年度は、28年度に得られた古細菌Pyrococcus furiosusのstalk・ABCE1複合体の結晶構造を生化学的に検証するため、結晶構造上でstalkと結合するABCE1のNBD1ドメインの5種のアミノ酸の点変異体を調製し、変異の効果を解析した。 ABCE1のstalk接触部位となるI170、V174、A219、A223、をそれぞれセリンに、R227をアラニンに遺伝子上で置換し、大腸菌を用いた発現系により、各蛋白質を調製した。蛍光偏光度測定法により各ABCE1変異体とstalk蛋白質C末端の結合性(Kd)を解析したところ、ABCE1のA219Sの点変異による結合力の大きな変化は見られなかったものの、I170S、V174S、A223S、R227A変異体では、stalkとの結合力が約1/10に低下した。これらの結果は、平成28年度に得られた結晶構造を支持し、ABCE1のNBD1ドメインのI170、V174、A223、R227の4種類のアミノ酸がstalkとの結合に特に重要であることを示している。 古細菌からの知見を真核細胞でも検証するため、平成29年度は酵母(Saccharomyces cerevisiae)のABCE1(Rli1)の酵母細胞を用いた発現系の構築を行い精製にも成功した。さらに酵母から80Sリボソームの調製も行い、酵母の系によるin vitroの機能解析系を構築した。また、酵母Rli1とstalk間相互作用の重要性を酵母細胞を用いたin vivoの解析から立証するため酵母ゲノム中のRli1の発現を制限し、プラスミドにより野生型と各種変異型Rli1を添加・成育させる系も作製し、真核生物の系による機能解析の準備が完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はリボソームstalk蛋白質とABCE1の結合機構を解明し、そのリボソームリサイクル反応への寄与を明確に示すことである。平成28年度までの研究で、古細菌リボソームstalkのC末端部位とABCE1の結合とATP加水分解への寄与について示した他、その結合の実態を結晶構造により示した。結晶構造は現代の構造生物学の根幹となる情報源であるが、構造が人工的に得られた、いわゆるartifactの可能性もあり、結果を水溶液中で検証することは重要である。そこで平成29年度は、28年度に得られた結晶構造でstalkのC末端と結合するアミノ酸を他に置換して水溶液中における結合性を生化学的手法で解析し、結晶から得られた知見の正当性が示された。この結果より、stalkのC末端がABCE1のNBD1ドメインの疎水性ポケットに実際結合し、これによりABCE1のATPase活性が促進されること(平成28年度の結果)が明確にされた。この結果より、平成28年度末に計画した大きな目的は達成されたと言える。 得られた知見を基盤として浮上する次の目的は、古細菌で得られたstalk・ABCE1相互作用とその役割が真核生物でも保存されているかどうかを検証することである。平成28年度末の29年度の計画では、酵母を用いた実験系を確立し、stalkと酵母ABCE1(Rli1)間の相互作用が機能面で重要であることを検証する予定であった。酵母によるRli1大量発現系の構築、酵母リボソームの調製、および酵母ゲノム中のRli1遺伝子を発現制御型遺伝子と置換し、プラスミド中のRli1遺伝子で生かす細胞の構築にはそれぞれ成功したが、ここまでに時間を要し、詳細な機能解析までは実施できなかった。しかしながら、解析の材料が完備できたことは平成29年度の大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は次の研究を行う。 1)平成29年度に確立した酵母Rli1の大量発現系を用いてRli1を調製し、酵母80Sリボソームを用いて、in vitro ATPase活性の測定を行う他、ショ糖密度勾配遠心法を用い、Rli1添加に依存した酵母リボソームのサブユニットへの解離を検出する。さらに、stalkの結合部位と考えられるRli1のNBD1ドメインへの変異導入体も発現・精製し、両活性への変異導入の効果を解析する。 2)これまで、酵母ゲノム中のRli1の発現を抑制し、プラスミドにより野生型Rli1を添加し細胞を生かす実験系を構築した。平成30年度は、この系を用いて各種Rli1変異の細胞成育への効果を詳細に解析し、stalkとRli1-NBD1間の相互作用の重要性を証明する。 3)ここまでの研究は主に、ABCE1(Rli1)のNBD1ドメインとstalkの相互作用の解析であるが、ABCE1の結晶構造ではNBD2ドメイン構造もNBD1と類似しており、stalkのC末端部位がNBD2とも相互作用する可能性がある。この点を検証するため、先ず結晶構造で両ドメインの構造を比較する。そして、stalk結合部位として同定された古細菌ABCE1のNBD1の疎水性ポケットに相当するNBD2に各種変異を導入しin vitroでstalk結合への効果を解析する。 4)酵母のRli1においてもNBD2への各種変異を導入してin vivoで細胞成育への効果を解析し、stalkとRli1-NBD2間の相互作用の有無とその意義を解析する。 5)以上の結果から、stalkのC末端部位とABCE1(Rli1)のNBD1との相互作用の機能面の意味を明らかにする他、NBD2との相互作用の有無とその意味も示し、リボソームリサイクルにおけるstalk蛋白質とABCE1間相互作用の分子機構を総括する。
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[Journal Article] The C-terminal helix of ribosomal P stalk recognizes a hydrophobic groove of elongation factor 2 in a novel fashion2018
Author(s)
Tanzawa, T., Kato, K., Girodat, D., Ose, T., Kumakura, Y., Wieden, H.J., Uchiumi, T., Tanaka, I., and Yao, M.
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Journal Title
Nucleic Acids Res.
Volume: 46
Pages: 3232-3244
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Binding of translation elongation factors to individual copies of the archaeal ribosomal stalk protein aP1 assembled onto aP02017
Author(s)
Honda, T., Imai, H., Suzuki, T., Miyoshi, T., Ito, K., Uchiumi, T.
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res. Commun.
Volume: 483
Pages: 153-158
DOI
Peer Reviewed
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