2016 Fiscal Year Annual Research Report
セントロメア機能調節の細胞高次機能への連係と次世代人工染色体の開発
Project/Area Number |
16H04747
|
Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
舛本 寛 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究部, 室長 (70229384)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | セントロメア / ヘテロクロマチン / 人工染色体 / CENP-A / ヒストン交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体基本機能の制御に乱れが生じるとゲノム機能を破綻させ、細胞死や老化、異常増殖を引き起こす。ヒト人工染色体(HAC)は、裸のDNAを細胞へ導入すると細胞自身が機能する各クロマチン構造を作り上げ、染色体としての機能を維持するシステムである。 本研究では、このヒト人工染色体とtetO配列/各種tetR融合タンパクを用いた構成学的手法を組み合わせ、染色体分配に関わるセントロメア機能構造体形成の全容解明とヘテロクロマチンとの集合バランスの調節メカニズムを明らかにする。これらセントロメアとヘテロクロマチンの集合バランスによりゲノム機能がどのように影響を受け、細胞高次調節機能の異常に繋がるのか、その連係メカニズム解明に迫ると共に、これらの知見を利用してバランスを個別に調節できる次世代人工染色体の開発をめざす。具体的には、(1)セントロメア機能形成の調節因子の解明、(2)クロマチン集合バランス調節と細胞高次機能への連係機構の解明、(3)クロマチン集合バランスを調節可能な次世代人工染色体の開発、の3つの計画に従って研究を進める。H28年度はそれぞれ以下の成果を得た。(1)正にも負にもセントロメア機能を調節可能なCENP-Bがクロマチン上に集合させる因子を明らかにした。(2)KAT7とSuv39h1はお互いに拮抗的にセントロメアクロマチンとヘテロクロマチンの集合バランス調節に関わることを明らかにした。(3)次世代型人工染色体構築の基盤となる、tetOとlacOをそれぞれ挿入した60kbの各種合成反復DNAを組み合わせた120kbの長鎖合成反復DNAをそれぞれ細胞へ導入して、人工染色体形成が可能であることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)セントロメア機能形成の調節因子の解明:セントロメア機能集合の核となるCENP-Aクロマチンの集合調節因子の選別を進め、人工染色体上にかずさcDNAライブラリーからの各種融合タンパクを結合させ、CENP-Aシグナルの増加/減少(正/負の調節)させる因子を多数得た。CENP-Bは正にも負にもセントロメア機能を調節可能であり、CENP-Bがクロマチン上に集合させる因子を調べた結果、ヘテロクロマチン側の調節因子と共に多数のオープンクロマチン側のヒストン修飾酵素も集合することを明らかにした。 (2)クロマチン集合バランス調節と細胞高次機能への連係機構の解明: CENP-Aクロマチンの補充に必須なMis18複合体と相互作用する因子の検索を進めた結果、Mis18複合体はCENP-Aシャペロン(HJURP)とヒストンアセチル化酵素(KAT7)を同時に集合させることを発見し、アセチル化の関わるヒストン交換反応とCENP-Aの新規集合が連係して起こることを明らかにした(Ohzeki et al DevCell 2016)。 (3)クロマチン集合バランスを調節可能な次世代人工染色体の開発:クロマチン集合バランスをオープン側にするとセントロメア機能形成が促進されるが、ヘテロクロマチン因子の結合はこれを阻害する。一方でヘテロクロマチンは染色分体のコヒージョン維持にも必要であり、人工染色体や染色体分配機能には必要である。そこで、次世代型人工染色体構築の基盤となるtetOとlacOをそれぞれ挿入した60kbの合成反復DNAを作製し、これらを組み合わせた120kbの各種長鎖合成反復DNAをそれぞれ細胞へ導入し、人工染色体形成が可能であるかどうか検定した結果、それぞれから多様な安定性を示す人工染色体が構築できた。 以上の成果に示した通り、計画は予定通り進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)セントロメア機能形成の調節因子の解明:CENP-Bは正にも負にもセントロメア機能を調節可能であり、CENP-Bがクロマチン上に集合させる因子を調べた結果、ヘテロクロマチン側の調節因子と共に多数のオープンクロマチン側のヒストン修飾酵素も集合することを明らかにした。H29年度はこれら因子がセントロメア機能集合の核となるCENP-Aクロマチンの集合と維持にどのように関わるのかについて解析する。 (2)クロマチン集合バランス調節と細胞高次機能への連係機構の解明: H28年度の解析から、Mis18複合体は、HJURPとKAT7を同時に集合させる結果を得て、アセチル化の関わるヒストン交換反応とCENP-Aの新規集合が連係して起こることを明らかにした。今後はこれらの反応に係る因子のノックダウンを行い、細胞老化などの細胞高次調節機能の異常にも繋がるのかどうかについて明らかにする。 (3)クロマチン集合バランスを調節可能な次世代人工染色体の開発:ヒストンアセチル化酵素(HAT)のようなオープンクロマチン側因子はセントロメア機能形成を促進するが、ヘテロクロマチン側因子はむしろ阻害する。一方で、ヘテロクロマチンは染色分体のコヒージョン維持にも必要であり、人工染色体や染色体分配機能には必要である。そこで、CENP-Aクロマチンとヘテロクロマチンを個別に誘発できるようにtetOとlacOをそれぞれ挿入した反復DNAを合成し、複数のクロマチン構造を融合タンパクで個別に制御可能な次世代型人工染色体の開発を進める。H28年度にtetOとlacOをそれぞれ挿入した120kbの長鎖合成反復DNAを細胞へ導入して人工染色体が形成可能であることを確認した。H29年度はこれら合成DNAを用いて複数のクロマチン構造を同時に誘発した場合、人工染色体形成効率を向上させることができるかどうかについて解析を進める。
|
Remarks |
かずさDNA研究所の細胞工学研究室がDaiwa Adrian Prizes 2016を受賞、英国王立協会で授賞式 http://www.kazusa.or.jp/j/information/re_info/2016/0805.html http://www.kazusa.or.jp/j/information/re_info/2016/1128.html
|
Research Products
(20 results)