2016 Fiscal Year Annual Research Report
イオン駆動力供給体の電子線とX線による作動機構の解明
Project/Area Number |
16H04757
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
米倉 功治 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 准主任研究員 (50346144)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 結晶解析 / 単粒子解析 / イオンチャネル / プロトン駆動力 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等動物から原核生物に至るまで、生体膜内外のプロトン濃度勾配(プロトン駆動力)は、生命活動を担う重要なエネルギー源になる。このエネルギーを使って、ATP合成、栄養素や合成した蛋白質の輸送、薬剤の取り込みや排出、運動の駆動等が実現される。細菌では、同じファミリーに属する膜蛋白質がいろいろな生命活動にプロトン駆動力を供給しているが、その構造情報は不足していた。本課題では、このうちの、鉄輸送に関わるExbBD、べん毛を駆動するPomAB等の電子線及びX線結晶構造解析と電子線単粒子解析を行い、その作動機構の解明を目指している。 電子線回折では非常に薄くて小さい結晶が構造解析の対象になり、かつ原子の荷電情報を得られる。この特徴を利用して、ターゲットのチャネル蛋白質の薄い微小結晶とそれと異なるpHで得られる50 - 100μm程度の結晶から、電子線とX線によりその結晶構造を決定、イオン通路等の荷電状態を明らかにする。さらに、単粒子解析により、結晶格子に縛られないいろいろなイオン環境下における構造やコンフォメーションの変化を高い空間分解能で捉える。以上から、この膜蛋白質ファミリーに共通するイオン駆動力の利用、異なる機能発現に繋がる分子機構の詳細を明らかにする。 現在、X線結晶構造解析に成功し、さらに、低温電子顕微鏡の単粒子解析からpH変化に伴う大きな構造変化を捉えている(論文審査中)。また、微小結晶からの電子線回折で高分解能の回折点を取得できている他、荷電状態を精密決定する際の基礎となる基礎的な計算を行った(Yonekura & Maki-Yonekura, J. Appl. Cryst., 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大きさ50 - 100μm程度の結晶とそれと異なるpH条件下で非常に薄い微結晶が再現性良く得られており、前者は、SPring-8のビームラインBL41XUにおいて2.8 Å分解能までのデータ測定し、構造を決定できた(論文審査中)。 さらに低温電子顕微鏡の単粒子解析により、pHの異なる種々のイオン環境下で、大きく構造が変化することを示す結果を得た(論文審査中)。 薄い微小結晶の電子線回折では、2Å分解能より良い回折点が得られている。電子線回折では電荷の荷電情報が得られるが、これまで電荷を含めた電子線の散乱因子を用いた構造解析の例は少なく、その取り扱い法も確立していなかった。そこで、電子線に対する散乱因子を精密に求めるため、非線形の最適化アルゴリズムを取り入れたソフトウェアScatCurveを開発した。これを用いて、さまざまな部分電荷を持つ原子の散乱因子の曲線に対する係数を正確に求めた。次に、荷電アミノ酸であるアルギニン、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸の側鎖の酸素原子、水素原子が持つ部分電荷の値を、カタラーゼの三次元結晶の電子線回折データに対して見積もった。回折パターンは、電子顕微鏡の特性周波数関数による改変を受けず、さらに、非弾性散乱した電子を除き弾性散乱した電子から得ているため、正確な部分電荷の推定が可能になると考えられる。与える電荷を少しずつ変えて、回折データに対して原子モデル精密化した結果、酸素原子に-0.3の電荷を与えた時に、Rfreeの値が極小になること分かった(Yonekura & Maki-Yonekura, J. Appl. Cryst., 2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶構造に含まれていないサブユニットとの共結晶構造解析や、低温電子顕微鏡の単粒子解析の分解能の改善を進める。現在、後者の分解能は6 Å程度で、全てのαヘリックスの可視化ができているが、側鎖の解像には至っていない。そのため、多数の氷包埋像を収集し、分解能を向上させる。 また、電子線回折から、イオン通路に沿って荷電状態の可視化を実現する。さらに、荷電状態のより精密な解析のため、参照できるデータの存在しないH+, C+-,N+-,S-, P+等の電子線散乱因子の計算を行う。
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[Journal Article] Taste substance binding elicits conformational change of taste receptor T1r heterodimer extracellular domains2016
Author(s)
E. Nango, S. Akiyama, S. Maki-Yonekura, Y. Ashikawa, Y. Kusakabe, E. Krayukhina, T. Maruno, S. Uchiyama, N. Nuemket, K. Yonekura, M. Shimizu, N. Atsumi, N. Yasui, T. Hikima, M. Yamamoto, Y. Kobayashi, A. Yamashita
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Journal Title
Sci. Rep
Volume: 6
Pages: 25745 (8ページ)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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