2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of crosslinked and stabilized microtubules
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16H04765
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鈴木 厚 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (00264606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 郁子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (80464527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微小管 / MTCL1 / GTP / コイルドコイル / 会合 / 束化 / AIS |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 分子の会合状態の解析:この2年間に進めた「MTCL1の分子集合構造」に関する研究成果を最終的に国際誌に発表し、中央部に存在する複数のコイルドコイル(CC)領域が、2分子の間で互いに特異性高くジッパー様に会合し、ホモ2量体を形成していることを報告した。また、この領域を介した会合が微小管制御に及ぼしている影響をさらに明らかにするために、薬剤依存的に低レベルでMTCL1を発現させ、高感度でその発現を検出する実験系を確立した。その結果、最もN末端側のCC領域を介した会合を破壊するだけでMTCL1のゴルジ体への細胞内局在が劇的に低下することを発見した。 2. C末端微小管結合領域に関する解析:安定化微小管内のGTP型のチューブリンを検出する抗体を用いることによって、MTCL1が結合している部位近傍のチューブリンがGTP型を取っていることを発見した。また、MTCL1のC末端微小管結合領域の発現がGTP-チューブリンシグナルを増大させることも見出し、MTCL1による微小管安定化機構のモデルを支持する結果を積み上げた。 3. AIS微小管束制御メカニズムの解析:発生初期のマウス小脳プルキンエ細胞におけるMTCL1の局在を詳細に解析し、生後3日においてゴルジ体と非常に鮮明な共局在を示すことを発見した。また、この段階で、すでにAISにも染色が見られることから、この分子がAISの形成期に積極的に働いているという仮説がさらに支持された。 4. MTCL1の哺乳類ホモログ分子、MTCL2の解析:同ホモログ分子が、既報されているような細胞外分泌タンパク質ではなく、MTCL1と同様に微小管を安定化し、細胞内微小管の組織化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、この分子のC末端微小管結合領域が細胞分裂時に高度にリン酸化を受け、紡錘体形成に関わっていることを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTCL1全長タンパク質の精製に関しては、バキュロウイルスの検討も含め進めたにも関わらず引き続き難航している。また、C末端微小管結合部位の解析に関しても、連携研究者の研究環境の変化のため予定していた「X線線維回折」がすぐに進められないという状況が生まれた。しかし、前者については当初想定もしていなかったMTCL1の構造機能相関に関する課題が生まれ、異なる方向からではあるがMTCL1の会合と微小管制御活性の解析が順調に展開することとなった。また、後者については、GTPチューブリン抗体を用いた解析が順調に進むとともに、新たな共同研究の展開の中で、「X線線維回折」に代えてクライオ電子顕微鏡による解析を進める準備を整えることができた。「神経細胞においてMTCL1がAIS形成に関わっており、ここに関わるAIS微小管束はゴルジ微小管由来である」ことを明らかにする計画も、MTCL1のゴルジ体への見事な局在が生後3日のマウス小脳において示されるという大きな進展を見せた。細胞分裂におけるMTCL1のリン酸化制御についても、まずそのホモログ分子、MTCL2の解析を通じて実験手法等の確立が進み、同様な実験をMTCL1について進める準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえつつ、適宜力の集中を図り、本研究が目指す「束化、安定化された微小管の生物学」の深化をさらに図る。具体的には、 1. この2年間で明らかとなったMTCL1の構造機能相関の解析をさらに進め、MTCL1の分子集合構造と微小管束化・安定化活性の関係を明らかにする。さらに、哺乳類に存在するMTCL1相同分子、MTCL2、およびMTCL3の解析も展開し、本研究を「細胞内微小管の束化・安定化を通じて細胞機能を制御するMTCLシステムの研究」に発展させる。 2.GTPチューブリン抗体による解析とクライオ電子顕微鏡解析を組み合わせて、C末端領域の微小管への結合がチューブリンのGTP型構造を誘導することを最終的に明らかとする。一方、「この領域がGTP型構造をとったチューブリンを好み、より高い親和性を示す」ことを証明することによって、本研究を進める中で浮き彫りになってきた「MTCL1の微小管安定化作用に正のフィードバックがかかっている」という新たな可能性の検証も進める。 3.細胞分裂の過程におけるMTCL1のリン酸化を解析し、その微小管架橋・安定化活性の制御機構を明らかにする。 4.マウス胎児プルキンエ細胞の組織学的解析と子宮内電気穿孔法を用いたノックダウン実験を引き続き進めることによって、MTCL1がAIS維持だけではなく形成にも関わっていること、そしてその機能が微小管の安定化を通じて発揮されていることを証明する。
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