2017 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質構造形成装置としての小胞体トランスロコンの機能解明
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16H04766
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
阪口 雅郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (30205736)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体膜 / オルガネラ / 膜透過 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞内での膜タンパク質の特異的局在化、膜組み込みは細胞の生命活動に必須の過程である。リボソームから伸長する新生ポリペプチド鎖の、トランスロコンによる取扱い様式、配列の認識、トランスロコンの識別部位などを明らかにすることを目的として昨年度に引き続き本研究課題を下記のように遂行した。(1)中程度の疎水性を持つ新生鎖でも、化学架橋可能な程度トランスロコンに保持されること、その際には後続の疎水性配列のトランスロコンへの進入を妨げない状況にあることを見出した。一方、正電荷によって強制的にトランスロコンで停止させた親水性配列では、後続の疎水性配列の進入が許容されない。中程度の疎水性配列はトランスロコンの第2の機能部位に存在すると結論された。この新規機能部位を同定するために、部位特異的化学架橋を継続し、トランスロコントンネルタンパク質Sec61分子の任意の部位に単一のCys残基を導入し、それを定常発現するHEK293細胞を樹立し、一連のCys部位をスキャンしたSec61を発現する細胞株群を作成し、粗面小胞体の作成を完了した。これらの小胞体膜小胞を用いて特異的な部位にCysを導入した新生鎖について化学架橋反応を実行し、配列の疎水性度と化学架橋するSec61の部位との関連をほぼ明らかにできた。(2)膜タンパク質の小胞体標的化を抑制するモチーフ(ETSモチーフ)結合因子については、精製同定に成功し、ノックダウンによって小胞体標的化が抑制されることが確認され、さらにノックアウト細胞にノックアウト耐性の当該遺伝子を導入することでレスキューされることが確認され、ETSを識別する因子であることが確定した。(3)新規フォールディングプローブを用いた膜透過因子群の解析では、本プローブを駆使して、疎水性配列の認識が大きく変動したトランスロコン遺伝子変異を複数見出すことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無細胞タンパク質合成-膜透過実験系を駆使して、中程度疎水性配列のトランスロコンによる認識部位に関する探査をほぼ完了し、新生鎖の疎水性度に応じた存在部位の変動を明らかにしたことは期待通りの進展である。トランスロコンに収納される新生鎖の配列によって、後続の疎水性配列の膜組み込みが影響されることや、その影響の程度が異なることで、第2の部位が提唱されていたが、それが同定された意義は大きい。膜タンパク質の小胞体標的化回避でも、同定した因子の作用をノックダウンで明確に確認し、さらにレスキューによって確定できた点は大きな進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回同定された第2の機能部位に関する評価を、新規フォールディングプローブを用いた解析と組み合わせて、機能の質的変化の側面から実施する。小胞体回避因子については、作用因子の機能の生化学解析を進め、他の膜タンパク質の局在との関連などを含め詳細に解析し、細胞生物化学分野に「小胞体標的化抑制因子」の概念を定着させる。
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Research Products
(5 results)