2018 Fiscal Year Annual Research Report
線維前駆中間体の解析を基軸としたアミロイド線維の伝播性および毒性の構造基盤の解明
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16H04778
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 絵理 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00432493)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質 / ミスフォールディング / アミロイド / 中間体 / 伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイド線維は、自らの末端構造を鋳型として正常タンパク質をアミロイド構造へと変換し構造伝播する。本研究では、鋳型構造の実体および核が形成され伝播性が発揮されるまでのタンパク質構造形成メカニズムを明らかにするため、「線維前駆中間体」の存在に注目し、これを安定に蓄積させたうえで解析する。さらにオリゴマー段階で示す毒性発現機構にも注目し、線維前駆中間体の解析を通してアミロイド線維の伝播性と細胞毒性の発現機構をタンパク質構造の見地から明らかにすることを本研究課題の目的とする。 これまでに、インスリン、インスリン由来ペプチド断片、アミロイドβタンパク質、トランスサイレチンを解析対象とした線維前駆中間体の捕捉および構造的特徴の解析を試みてきた。その結果、インスリン由来ペプチド断片では、線維前駆中間体を経由した反応経路が明らかになり、CD、DLS、SAXSを用いた時分割的な構造変化を通して線維前駆中間体が構造発達するプロセスを明らかにした。また、反応条件を変えることで異なる線維前駆中間体を観察できる可能性も分かった。さらに、この線維前駆中間体がフィブリノーゲンと相互作用することによりアミロイド線維形成が阻害されるメカニズムを検討し、論文を投稿した。アミロイドβタンパク質については、線維前駆中間体の捕捉には成功していないものの、今後線維前駆中間体の毒性に関する知見を得るためにリポソームの破壊とアミロイド線維形成を同時計測できる実験系を準備した。トランスサイレチンについては、フィラメント状のアミロイド様凝集体の線維前駆中間体の存在が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線維前駆中間体を経由したアミロイド線維形成反応をいくつか観察できつつあり、核形成に関わるタンパク質分子の集合や構造変化の実態に近づいている。特にインスリン由来ペプチド断片については、線維前駆中間体が準安定状態として蓄積する利点を持つだけでなく反応条件に応じて異なる線維前駆中間体が生成する可能性が示唆されており、線維前駆中間体の構造特性を明らかにするための有用な題材を見出したと考えている。一方でアミロイドβタンパク質やトランスサイレチンでは線維前駆中間体の捕捉がなかなか難しいのが現状であるが、少なくともトランスサイレチンに関してはフィラメント状凝集体における中間体が得られているのでこれを糸口として探索を継続し、アミロイド核形成の根底にある分子機構をより包括的に追究したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリン由来ペプチド断片の解析を進展させ、従来注目してきた中間体に加えて新しい反応条件で生成する中間体も解析対象として構造の比較を行う。それと同時に、核形成プロセスについても小角X線散乱を用いた中間体の構造的特徴の解析と生成過程の時分割観察を試み、類似点および相違点を明らかにする。アミロイドβタンパク質については、オリゴマーの生成が多数報告されており中間体捕捉の実現が期待されるので、探索を継続する。さらに、リポソームを用いた脂質膜破壊の実験系も準備したので、これを利用して線維前駆中間体の毒性に関する構造知見も得る。トランスサイレチンについては、上述のとおりフィラメント状のアミロイド様凝集体の線維前駆中間体の存在が確認されたので、これの詳細な解析を進めるとともに、ファイバー状のアミロイド線維が得られる条件を探索したうえで改めて線維前駆中間体の捕捉を試みる。以上の解析の後に観測できた様々な線維前駆中間体の性質を総合評価しアミロイド核形成メカニズムを議論する。
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Research Products
(28 results)