2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of signal transduction regulated by the interactions to cell membrane
Project/Area Number |
16H04780
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木寺 詔紀 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (00186280)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | タンパク質 / 分子シミュレーション / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
MAPKパスウェイの中核を担うSOS-Rasの相互作用機構を明らかにすることを目指して、SOSが細胞膜上にリクルートされることによる自己阻害型→活性型(Rasがallosteric siteに結合できる構造)への構造変化機構の解明を課題として取り組んでいる。そのために自己阻害型結晶構造(1-1049, PDB:3KSY)をもとにして、野生型とNoonan症候群に見られる活性型を誘導する変異体R552Gの2種類について、それぞれ水中での分子動力学シミュレーションを行った。その結果、活性型への転移に伴って起こるDHドメインとRemドメインの解離運動に関わる二つのドメイン間の揺らぎの大きさが、R552Gの変異によって2倍の大きさになることを示すことができた。これは、R552があるhelical linkerと呼ばれる長いヘリックスを含むループが、Remドメイン、DHドメイン、さらにはN末端のHFドメインを接続する役割を持ち、R552Gの変異によって、それらドメイン間の結合が弱くなり、DHドメインとRemドメインの間の相対運動が拡大し、最終的には解離に到る可能性を拡大するものと推測される。この結果から、「細胞膜上にリクルートされることによってhelical linkerのドメイン間をつなぐ相互作用が弱くなる」という仮説を立て、それを証明する方向に研究を進める次のステップが見えてきた。 さらに、今後行う粗視化モデルシミュレーション(CafeMol)の試行的計算も開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のゴールは、「細胞膜上へのSOSのリクルート」と「SOSの活性型への転移」を接続することにある。この目的は、シミュレーションを行うということのみでは達成することはできない。まずその接続のためのモデルを作り、次にそのモデルの妥当性を示すという順序であると考えている。従って、1年目で蓋然性のあるモデルが構築できたことは、順調に研究が進んだという評価になった。しかし、今後行う仮説の妥当性を示す研究の困難さとともに、想定した仮説の真偽が現段階で確定できないところから、「おおむね」という譲歩に結びついている。
|
Strategy for Future Research Activity |
「細胞膜上にリクルートされることによってhelical linkerのドメイン間をつなぐ相互作用が弱くなる」という仮説を野生型に即して以下のように展開して考える。すなわち、「helical linkerにC末端側で隣接する2次構造の少ないRemドメイン中の小さな突起状構造(570-615)が膜と相互作用することによってunfoldし、helical linker がRemドメインに固定されなくなることによってドメイン間をつなぐ相互作用が弱くなる」と考える。その第一段階として、野生型で、570付近で鎖を切断することで570-615のunfoldingを模倣し、helical linkerが動き出すかどうかを水中での分子動力学シミュレーションで確認する。同時に、粗視化モデル(CafeMol)を用いて、細胞膜を模したSOSが結合するホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸に対応する負電荷を有する2次元平面上に、SOSの570-615の近傍を接地させることで、570-615の構造がunfoldし、そこからのドメインの解離が進むかどうかを観察する。これは最終的には、全原子モデルで行う予定であるが、当面は粗視化モデルで行う。これらのシミュレーションによって、仮説の妥当性を検証したい。それが完了した段階で、活性型の最終的なモデルを作り、Rasとの相互作用の問題に進めたいと考えている。
|
Research Products
(7 results)