2016 Fiscal Year Annual Research Report
栄養状態に応じて個体発生と行動を制御する神経基盤の研究
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16H04792
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丹羽 隆介 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60507945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 栄養 / 神経 / 昆虫 / ステロイドホルモン / エクジステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、特に以下の2点に注力したが、いずれも期待どおりの結果を得るに至らなかった。 1. 3対からなるSE0神経細胞群で活性を持つプロモーターを元にして、さらに1対ずつの細胞で活性を持つ領域を探るためのエンハンサー解析実験を行った。元のプロモーター領域を細分化したDNA領域を、基本プロモーターおよびGAL4転写因子のコーディング配列と融合させたコンストラクトを作出し、それぞれについてトランスジェニック系統を得た。しかしながら、作製したいずれのコンストラクトにおいても、3対の神経細胞よりも少ない細胞をラベルする系統を得ることはできなかった。 2. SE0神経のステロイドホルモン生合成器官(前胸腺)への投射は、酵母の量に応じて変化することが知られている。酵母の主要な栄養素はタンパク質であることを踏まえ、神経投射パターンの変化にとって重要なアミノ酸が何であるのかを検討した。個別のアミノ酸のみを主成分とする餌を20種類のアミノ酸毎にそれぞれ作製し、それを摂食したショウジョウバエの幼虫におけるSE0神経の投射と発育タイミングを計測した。しかしながら、変化の起因となる特定のアミノ酸に絞り込むことはできなかった。 一方で、SE0神経以外に前胸腺でのステロイドホルモン生合成を調節する神経が存在するか、またその役割が何であるかを追究する実験を実施した。現在までに、ある種の神経ペプチドを産生する神経細胞が前胸腺に投射すること、そしてこれがPTTH神経細胞と物理的な相互作用を示すことを見出した。また、この神経細胞の活動を活性化させた際に、ショウジョウバエの蛹化のタイミングが遅れることを見出した。すなわち、この神経は、従来発見されてきた神経とは異なり、前胸腺でのステロイドホルモン生合成を負に調節する役割を持つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SE0神経の反応に本質的な特定の栄養素を同定できなかったこと、またSE0神経細胞群の活性を細胞毎に操作できるプロモーターを得られなかったことは、当初の期待通りには成果を得ることはできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
SE0神経依存的な発育タイミング制御メカニズムにせまるため、3対のSE0神経群で活性を持つプロモーターを利用したトランスジェニックRNAiスクリーニングを実施する予定である。このスクリーニングでは、膜受容体や栄養センシングに関わることが予想される遺伝子計300を対象として、それぞれの遺伝子機能をRNAiによって低下させた際の発育タイミングと神経突起形状を精査する予定である。 また、SE0神経の活性を追尾するため、神経活動モニターのためのプローブ系統(GCamp系統など)を用いた実験も実施する。
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