2016 Fiscal Year Annual Research Report
多年生植物の有する維管束を介した新規冬季環境適応機構の解明
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16H04801
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 忍 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70196236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポプラ / 導管液 / 根 / 短日 / 低温 / 耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
スクロースの排出輸送体SWEETとスクロースをフルクトースとグルコースに分解するインベルターゼおよび導管液タンパク質(XSP25, XSP24)の遺伝子発現を、無菌ポット栽培のPopulus trichocarpaを用いて解析した。その結果、挿し木苗の地上部の成長は短日条件 2週目に止まり、長日条件に戻した1週目で芽吹き始めた。それに対し、根の成長は長日2~3週目に最大になり、短日に移すと徐々に減少し、低温条件でほぼ完全に成長が止まり、長日に戻すと成長を再開した。これらのことから、根の成長が地上部とは異なる制御を受けていることが示唆された。 導管液成分に関わる遺伝子の根における発現を調べると、SWEETは短日および低温で、インベルターゼは低温のみで、XSP25は短日のみで、XSP24は短日と低温で上昇した。これらの結果から、デンプンを分解して生産されたスクロースは、根において短日・低温で誘導されるSWEETによってアポプラストに排出され、そこで低温で誘導される細胞壁インベルターゼによってグルコースとフルクトースに分解され、XSP24とXSP25は短日・低温により誘導され、冬から春先に導管液中を流れるのではないかと考えられた。また、これらの遺伝子の生理機能を解析するため、XSP24, XSP25, SWEETのRNAi形質転換ポプラや過剰発現シロイヌナズナを作出した。 一方、地上部から地下部への短日情報の伝達機構を調べるため、短日処理したポプラの葉からmicroRNAを調整し、次世代シークエンサーを用いた解析を行ったところ、短日で発現が上昇するmiRNAが複数同定された。それらには、植物ホルモンや器官発生に関わるものが含まれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物学会や植物生理学会で研究発表を行うとともに、論文の発表も行っており、研究が当初の計画通り進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ポプラにおいて冬季に増加する導管液物質に関わる遺伝子の機能を、形質転換ポプラやシロイヌナズナ、タバコを用いて、冬季環境に対する耐性を指標に解明していく。また短日下の葉において発現するmicroRNAを同定し、根への情報伝達因子としての特性解析を進める。
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