2017 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリン酸の過剰蓄積が植物の発生に及ぼす影響の時空間的解析
Project/Area Number |
16H04803
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
Ferjani Ali 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20530380)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 植物 / 葉器官 / H+-PPase / fugu5変異体 / ピロリン酸 / 組織 / 補償作用 / 表皮細胞の単純化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリン酸(PPi)の過剰蓄積によって生じる様々な発達異常の分子メカニズムを葉器官の発生段階及び組織毎に解析し、植物代謝と発生制御におけるH+-PPaseの役割を多元的に解明することが目的である。 1.PPiの蓄積がもたらす影響は組織によって異なるのではないか?(1)an-1 fugu5二重変異体では表皮細胞が三次元的に隆起する。その原因解明に向け、an-1 fugu5に表皮細胞または柵状組織で特異的なPPi分解能のための系統を構築し、解析した。その結果、表皮細胞が三次元的に隆起する表現型はan-1 fugu5 PDF1pro::IPP1でのみ回復することを見出した。表皮細胞におけるPPiの過剰蓄積がこうした発達異常の主要因であることが初めて発見された。(2)fugu5におけるPDF1pro::GUS及びCLV1pro::GUSの組織特異的な発現パターンも確認した。(3)fugu5 PDF1pro::IPP1及びfugu5 CLV1pro::IPP1の黄化芽生えを用いて、CE-MSによるメタボローム解析を行った。 2.fugu5の初期成長における一時的なPPi除去能付加がもたらす影響の検証。fugu5 ICLpro::IPP1系統の作成を引き続き試みる。 3.孔辺細胞におけるPPi分解の役割の解明。fugu5の孔辺細胞のPPiのみを分解するGC1pro::IPP1系統を作製・解析したところ、気孔の閉口は野生型並に回復した。これは、正常な気孔機能には孔辺細胞内のPPi濃度調節が必須であることを示唆する結果である。 4. 表皮細胞の発達異常はPPiと細胞骨格の総合作用で説明が出来るのか?(1)5mM以上のPPiは微小管重合を阻害する。(2)fugu5 UBQpro::EYFP-TUB6を用いたライブイメージングの結果、PPiの蓄積は微小管の動態に影響を与える可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の交付申請書に入力した「研究目的」及び「研究実施計画」に対する本年度の達成度は以下の通りである。 1.本研究計画で作成する予定の系統「an-1 fugu5 PDF1pro::IPP1とan-1 fugu5 CLV1pro::IPP1」及び「fugu5 PDF1pro::GUSとfugu5 CLV1pro::GUS」並びにその詳細な解析は予定通り完了した。近いうちに学術論文のまとめ作業に着手する予定である。加えて、fugu5 PDF1pro::IPP1及びfugu5 CLV1pro::IPP1の黄化芽生えを用いて得たCE-MSによるメタボローム解析のデータの解析も順調に進んでいる。 2.fugu5の初期成長における一時的なPPi除去能付加がもたらす影響の検証。本研究計画で唯一遅れている部分であり、しかし最近ICLproのクローニングの手順やベクター等への工夫次第で十分達成できることがわかった。fugu5 ICLpro::IPP1系統の作成を完了させ、表現型解析へと進む予定である。 3.孔辺細胞におけるPPi分解の役割の解明: fugu5 GC1pro::IPP1の系統の作成や解析が完了した。さらに、fugu5背景においてGC1pro::GUSは研究計画通り孔辺細胞でのみ発現することも確認した。現在学術論文のまとめ作業に着手している。 4.表皮細胞の発達異常はPPiと細胞骨格の総合作用で説明が出来るのか?試験管内でPPiが濃度依存的に微小管重合を阻害することを明らかにした上で、fugu5 UBQpro::EYFP-TUB6を用いた生体内のライブイメージングの結果からも、PPiの蓄積が微小管の動態に影響を与える可能性が強く示唆された。現在学術論文のまとめ作業に着手している。 以上のように、本研究課題はおおむね順調に進展しており、当初の研究目的が予定通り達成されつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のこれまでの進捗状況をふまえ、今後以下のように研究を推進して行きたいと考えている。 1.現在二本の学術論文にまとめつつある研究成果を積極的に国内外の学会等で発信する。 2.ICLpro::IPP1のコンストラクトの作成及びそれを用いたfugu5への形質転換体の作成の実現に向けて様々な工夫をして行きたい。具体的には、この2年間試してきた従来のクローニング法ではICLproのクローニングが難しく工夫が必要という結論に至った。しかし最近になってクローニングの手順やベクター等への工夫次第で十分達成できることがわかったので、近いうちに系統の作成が完了する見込みである。 3.正常な気孔の分布や機能発揮には孔辺細胞内のPPi濃度調節が必須であることを強く示唆する結果を得ることができた。これ自体は極めて重要な発見であり、引き続きその背景にある分子メカニズムの解明へ取り組んで行きたい。この研究成果が発表されれば、PPiが気孔の開閉の新規の制御因子として提案できると期待している。さらには、代謝制御と発生制御の密接な関係を読み解くための手がかりとしたい。 4.an-1 fugu5二重変異体で表皮細胞が三次元的に異常に隆起する表現型はこれまでに報告例はない。本研究で得た成果は、PPiホメオスタシスは個々の表皮細胞の正常な分化に必須であることに加え、表皮組織全体に与える影響が大きいことをうかがわせるものである。引き続きPPiと細胞骨格の関係を解明するための基盤研究として行きたい。
|
Research Products
(21 results)
-
[Journal Article] The phosphate fast-responsive genes PECP1 and PPsPase1 affect phosphocholine and phosphoethanolamine content2018
Author(s)
Hanchi M, Thibaud MC, Legeret B, Kuwata K, Pochon N, Beisson F, Cao A, Cuyas L, David P, Doerner P, Ferjani A, Lai F, Li-Beisson Y, Mutterer J, Philibert M, Raghothama KG, Rivasseau C, Secco D, Whelan J, Nussaume L, Javot H.
-
Journal Title
Plant Physiology
Volume: 4
Pages: 2943-2962
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-