2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04806
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 博和 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10589922)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞、組織 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の地上部はクチクラと呼ばれる疎水性の保護膜に覆われている。クチクラは地上部の器官の表皮細胞の外界側に形成され、気孔以外からの水分の損失を制限し、葉状器官の形態形成にも重要な機能を担っている。クチクラ形成の空間的な制御機構についての知見を得るために、クチクラ関連物質の細胞外への輸送に関わるABCG11 の局在制御因子の探索を進めた。ABCG11 の細胞内局在を評価する上で、緑色蛍光蛋白質 (GFP) を融合することにより分子の機能が大きく損なわれていないかどうかについての傍証を得るために、GFP-ABCG11 が abcg11 の変異体の表現型を相補する機能を保持していることを確認した。ABCG11-GFP 融合蛋白質は野生型植物の地上部の表皮細胞では細胞膜に局在するが、蛍光シグナルの局在異常を指標としてEMS変異集団から単離したW2243 系統では GFP-ABCG11 が細胞内にも異常に蓄積していた。この異常は変異系統の後代でも再現的に観察することができた。変異系統で GFP-ABCG11 が蓄積する部位を明らかにするために、地上部の表皮細胞で発現が認められる各種オルガネラマーカーを選定し、これらのオルガネラマーカーを変異体に導入し、共局在解析を行った。その結果、変異系統ではトランスゴルジ網の性質を持つ細胞内区画に GFP-ABCG11 が蓄積していることが示唆された。また、遺伝解析により、W2243 は劣性の1遺伝子の変異体であり、原因遺伝子は第3染色体の 2.88 から 3.17 Mbの領域に位置することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クチクラ関連輸送体の局在に異常を示す変異体について、蛋白質局在の異常を再現的に確認することができ、細胞レベルの異常について、オルガネラマーカーを用いた解析を行うことができた。また、変異体の表現型の原因となっている遺伝子座の領域を特定することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
W2243 系統については第3染色体の候補領域の中で候補遺伝子の塩基配列を確認したところ、1カ所に塩基置換が見つかっている。今後、この遺伝子解析を進めることで ABCG11 の細胞膜局在に関わる分子機構についての知見が得られると期待される。類似の表現型を示すW2290 系統についてもオルガネラマーカーとGFP-ABCG11 の共局在解析、原因遺伝子座のマッピング、遺伝子クローニングを進める。表皮におけるクチクラ形成の制御系についての知見を得るために、クチクラ形成と表皮の層構造の制御に関わる受容体型プロテインキナーゼ ALE2 の YFP 融合コンストラクトを作成し、シロイヌナズナの形質転換体を作出した。今後、ALE2-YFP の機能と局在の詳細な解析や、異なるタイプの受容体型プロテインキナーゼである ACR4 との相互関係の解析を進める予定である。
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Research Products
(4 results)