2017 Fiscal Year Annual Research Report
動物の変態において、形態と行動の変化を調和させるメカニズムの解明
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16H04815
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10400649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 変態 / 神経生物 / 形態 / 行動 / ホヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、ホヤの変態イベントを開始させる分子メカニズムを明らかにした。ペプチドホルモンの1種であるGnRHはホヤの幼生期から発現し、幼生の変態を誘導する活性があることを我々のグループは報告していた。本年度の研究によって我々は、これまでの研究で単離していた、尾部吸収を開始できない表現型をもつ突然変異体tail regression failedの原因遺伝子が、ペプチドホルモン産生に必要なタンパク質Prohormone convertase 2 (PC2)をコードする遺伝子であることを突き止め、ホヤ変態におけるペプチドホルモンの必要性を従来よりも明確にした。さらに、GABA作動性ニューロンが、代謝型受容体であるGABA B receptorを介してGnRHを中心とする神経ペプチドの放出をオンにし、それを受容した尾部組織が吸収を起こすことを明らかにした。また尾部吸収の駆動時に筋肉細胞と表皮細胞に特徴的なアクチン繊維構造が出現すること、筋肉や脊索細胞は表皮細胞がなくても吸収されるが、表皮細胞が吸収を促進する効果があることを解明した。成体組織構造の成長については、甲状腺ホルモンが体全体の成長に必要なことや甲状腺相同器官の内柱の形成に必要な転写因子の同定、Hox13が輸精管先端の構造を形成するメカニズムの解明、を達成した。実験技術として、トランスジェニック系統を再現性高く樹立するPhiC31システムの導入を試み、カタユウレイボヤ内でこの酵素が活性を保持して組換えを誘導できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホヤが変態を開始させる機構として、抑制性の神経伝達物質GABAが関与していることは分かっていたが、その受容体を同定したことで、GABAがどのニューロンに作用して変態を開始するのか、どのようなシグナル伝達機構を用いて幼生行動を停止させ変態を開始させるのかを細胞レベルで同定できる重要なヒントを得ることができた。特にペプチドホルモンの関与を明確にしたことで、本研究をこれまでの研究成果に統合できたことは極めて重要である。これらの発見を突破口にして、ホヤの変態機構の詳細を明らかにできると考えられるためこの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに得られた結果をさらに深め、細胞及び生理学的にホヤが変態イベントを開始する機構を追求する。特に受容体を同定できたことで、細胞内でのシグナル伝達経路へとアプローチできると予想しており、そのような解析を進める。技術開発からの後押しも受けつつ、ホヤがGABAのシグナルによって幼生運動を停止させ、尾部吸収や成体組織の成長を誘導し、変態を完了させるまでの一連のメカニズムを明らかにした上で、できる限り早期の論文発表を目指す。
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