2017 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類頭部内骨格の比較発生学的検討-昆虫類基部分岐の系統学的再構築-
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16H04825
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
町田 龍一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50199725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 眞生子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (90635872)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 比較発生学 / 六脚類 / 昆虫類 / 幕状骨 / 無翅昆虫類 / カマアシムシ目 / 多新翅類 / 系統進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の中で、下記の二項目が特筆できる。 一つ目は後幕状骨の由来に関するものである。昆虫類の内骨格は、外胚葉上皮が陥入し、「体内」にクチクラを分泌することで形成される。昆虫類の呼吸系である気管も同様に外胚葉上皮の陥入に由来するものであり、外胚葉の由来は側板とされ、連続相同性の観点から、頭部内骨格系の一つである後幕状骨は気管に相同とされてきた。しかしながら、私たちの発生学的研究は、後幕状骨の背板由来を強く示唆した。系統学的議論を発展させるには、構造のグラウンドプランの把握、とりわけ起源の理解は重要である。このような背景から、気管系と後幕状骨の由来に関する理解の相違を調停すべく、昆虫類の側板の形成過程を、モデル生物のコオロギを用いて電子顕微鏡で詳細に検討した。その結果、側板は付属肢の亜基節由来であり、気管は側板とはまったく起源を異にする背板に形成されることを明確に示し、後幕状骨の背板由来構造であるとことが強く支持された。この結果、頭部内骨格系の議論を、後幕状骨が背板の外胚葉陥入であるとの理解の下、さらに発展させてよいことになった。 もう一つは、カマアシムシ目の前幕状骨に関わるものである。六脚類、少なくとも外顎類の前幕状骨は触角体節付近の外胚葉陥入に由来すると理解されているが、カマアシムシ目の「前幕状骨」が触角体節付近の外胚葉陥入に由来するとの証拠は一切得られなかった。その一方で、カマアシムシ目の「前幕状骨」が、前腸を裏打ちするクチクラと、その背方で連続している可能性が見出された。別の外胚葉陥入に由来する構造が分泌したクチクラが分泌後連続するとの理解は成り立ちにくい。可能性として、前腸の一部が膨潤し背部のクチクラが「前幕状骨」見紛うほどに著しく拡張、「前幕状骨」として筋肉系の付着点として機能しているとするのが妥当である。このような作業仮説のもと、次年度の研究を発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カマアシムシ目の頭部内骨格に関して、その形成過程の全貌の把握を目指したが、それには程遠い状況であった。しかしながら、前幕状骨が前腸のクチクラ構造の拡張に由来する可能性を示せたことは大きな進歩と考える。 トビムシ目に関して、透過型電子顕微鏡像のコントラストを高めることには成功せず、データ的には進歩がほとんど見られなかった。さらなる方法の改善が求められる状況である。 このような中、後幕状骨の由来に関して、思いもかけぬ成果が得られたことは特筆できる。すなわち、後幕状骨と相同とされる気管系とに関して、従来、起源は側板由来とされてきたが、私たちは後幕状骨が背板由来であるとの解釈で議論を進めてきた。この理解の齟齬に関して調停がなされ、気管系も背板由来であるとの結論が導かれたことは大きな進歩である。本成果はScientific Reports に掲載、プレスリリースされた。 以上、総合的に判断し、「やや遅れている」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
カマアシムシ目の「前幕状骨」と同定されてきた構造が、他の六脚類とは異なり、前腸の一部が膨潤し背部のクチクラが「前幕状骨」見紛うほどに著しく拡張、「前幕状骨」として筋肉系の付着点として機能するようになったものであるとの可能性が出てきた。しかしながら、このような理解はカマアシムシ目のみならず六脚類でも初めての構造プランであるため、慎重かつ説得力のあるデータの提出が強く望まれる。このために、器官形成が始まる胚発生中期から孵化、さらには最終形態が完成する3齢幼虫までのすべてのステージごと、頭部の超薄連続切片を作成、透過型電子顕微鏡で検討するほかに方法はない。このような作業を行なうためには複数のダイヤモンドナイフが必要であるが、昨年度の経費で3刀購入済みである。また、切片作成、切片観察は途方もなく時間の掛かる作業であるため、次年度においては人件費の確保も重要である。 トビムシ目に関しても各ステージの超薄連続切片の作成し、透過型電子顕微鏡像のコントラストを上げる方法を早急に開発することで詳細な検討を行う。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Egg structure and outline of embryonic development of the basal mantodean, Metallyticus splendidus Westwood, 1835 (Insecta, Mantodea, Metallyticidae)2018
Author(s)
Fukui, M., Fujita, M., S. Tomizuka, Y. Mashimo, S. Shimizu, C.-Y. Lee, Y. Murakami and R. Machida
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Journal Title
Arthropod Structure and Development
Volume: 47
Pages: 64-73
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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