2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H04840
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90392117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 明徳 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (40378774)
伊藤 武彦 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90501106)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 共生 / 腸内微生物 / 昆虫 / シロアリ / セルラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、タイで採集した2種のシロアリを用いて各種実験を行った。 まず、いずれのシロアリ種の後腸内にも原生生物が充満していることを確認した。これらは通常の顕微鏡観察下では全く動かないが、大腸菌などを嫌気培養した溶液を添加することで活発に運動を開始した。原生生物の数と直径を計測したところ、同一の腸内に、形態は酷似するものの、サイズのピークが明瞭に異なる大小2種以上の原生生物がいることが判明した。 いずれも細胞内に木片らしきもの、さらにメタン生成古細菌特有の自家蛍光を多数確認できた。特に「大」タイプは大量の木片用固形物を包含しており、各種組織染色でも核の識別が困難なほどであった。透過型電子顕微鏡観察も試みたが、やはり細胞内の硬い包含物の存在により、超薄切片作成に失敗した。 細胞内に木片様物質を含んでいたことから、木質の主成分であるセルロースの分解酵素活性を、腸の各画分について測定した。その結果、シロアリ自身が分泌する唾液腺を含む画分と、原生生物を含む後腸画分で顕著な活性が測定できた。原生生物細胞の転写産物解析も開始した。培養不能であるため、少数の細胞から行わざるをえず、条件の最適化を継続している。 これら原生生物を1細胞ずつ採取して、18S rRNA遺伝子配列の基づく分子系統解析を行ったところ、各シロアリ種に、「大」1種、「小」2種の原生生物が共生することが判明し、分子系統学的な位置を特定できた。さらに、多様な高等シロアリにおいて、原生生物特異的なプライマーを設計して遺伝子を増幅したところ、意外なことに、多様なシロアリ種に分布していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した内容にそって、概ね順調に成果が出ている。電子顕微鏡観察など、上手くいかなかったものについても、当初から予想されていてことであり、今後、対処していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本郷(東工大・代表)と山田(長崎大・分担)が日本の南西諸島、タイ、オーストラリアなどの亜熱帯~熱帯地方で材料となる各種高等シロアリを採集し、それらが保有する原生生物を実験に使用する。
(1)H28年度に行った内容のうち、新規原生生物の透過型電子顕微鏡観察は不成功であったため、H29年度には新たに工夫したプロトコルで試行してみる。(2)H28年度に行った新規原生生物の遺伝的多様性解析において、予想外に多様なシロアリ種が同原生生物を保有していることが判明したため、H29年度にも解析対象のシロアリ・ゴキブリ種を追加し、それらが持つ原生生物細胞の顕微鏡観察等も行う。(3) H28年度に行ったセルラーゼ活性測定では予想通りの結果を得られているが、H29年度も継続して、より信頼性の高いデータを取得する。(4)新規原生生物の転写産物解析については、H28年度中に行った実験結果の品質が十分ではないため、プロトコルを改良して実行し、情報解析を進める。(5)新規原生生物のゲノムサイズ測定は、H28年度中にも試みたが、やはり細胞内の夾雑物によって阻害されてしまった。H29年度は再度試みる。(6)新規原生生物が有翅生殖中によって運ばれるのかどうか、H28年度中に開発したPCRとFISH法による同原生生物の検出法を用いて検討する。
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Research Products
(7 results)