2016 Fiscal Year Annual Research Report
運動トレーニングによる高齢者の発汗機能改善特性とその性差
Project/Area Number |
16H04851
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
天野 達郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60734522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発汗量 / 単一汗腺あたりの汗出力 / 活動汗腺数 / 身体部位差 / 高齢者 / マラソントレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,運動トレーニングによる高齢者の発汗改善特性を検討するため,以下の2実験を実施した.実験(1)では,70歳前後の高齢男性マラソンランナー(OR群)と大学陸上競技瞬発系(YS群)に対して,27.5℃・50%RH下で8 km/hのトレッドミル走を30分間負荷した.運動時の心拍数・直腸温には有意な群差はみられなかった.身体17部位で測定した局所発汗量では,腰中央,脇腹,腹右,胸左,上腕,右頬でOR群がYS群よりも有意に多かったが,下肢部位では有意な群差は認められなかった.マラソン記録の優れたOR群の一部と大学陸上競技持久系(YR群)の11km/h走のデータも加え,OR群はYS群より優れた発汗機能を,記録の優れたOR群ではYR群と同等もしくはそれ以上の発汗機能を有することが示唆された.この高齢者に観察された発汗機能の改善には身体部位差が存在し,その改善の程度は老化が早期に発現する部位(下肢)で小さいことが推察された.実験(2)では,70歳前後のOR群とYR群に対し,30℃・50%RH下で低・中・高強度自転車運動を各15分間連続負荷した.運動中の直腸温には年齢差はみられなかった.発汗量は,OR群がYR群より前腕の低・中強度で,胸の中強度でいずれも有意に高かったが,逆に大腿の高強度で有意に低かった.活動汗腺数には前腕・胸・大腿の低・中・高強度で年齢差はみられなかった.単一汗腺あたりの汗出力はOR群がYR群より,前腕および胸の中強度で有意に高かったが,逆に大腿の高強度で有意に低かった.以上の結果から,少なくとも70歳までのマラソンランナーは若年ランナーと同等もしくはそれ以上の発汗機能を保てることが示唆された.ただし,老化が早期に発現する部位(下肢)では単一汗腺あたりの汗出力の低下(汗腺の萎縮 and/or コリン感受性の低下を意味する)に起因して発汗機能が低下していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究実施計画通り,高齢男性マラソンランナー,大学陸上短距離選手および中長距離選手のトレッドミル走時の身体17部位の発汗量,さらに高齢男性マラソンランナーと大学陸上中長距離選手における低・中・高強度自転車運動時の発汗反応をそれぞれ比較し,運動トレーニングによる高齢者の発汗改善特性(70歳でも若者のランナーと同等もしくはそれ以上の発汗機能を保てるが,老化が早期に発現することが既に見出されている下肢では改善の程度が小さい)を検討することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で見出した,運動トレーニングによる高齢者の発汗改善特性を汗イオン再吸収能力から検討するとともに,発汗改善特性のメカニズムをイオントフォレーシステストと皮膚温度感受性テストから検討する.すなわち,(1)高齢男性マラソンランナーにおける運動時の発汗量とガルバニック皮膚コンダクタンスの対応関係からその変曲点(汗イオン再吸収能の指標)を個人の測定部位毎に求め,高齢マラソンランナーの汗腺の汗イオン再吸収能力が大学陸上競中長距離選手と比較してどの程度保持できているのか,その程度に身体部位差が存在するのか検討する.(2)高齢男性マラソンランナー,一般高齢男性,若者男性長距離選手に対し,イオントフォレーシス発汗テストを実施し,高齢マラソンランナーが汗腺機能の老化をどの程度改善しているのか,その改善度に身体部位差が存在するのか検討する.(3)高齢男性マラソンランナー,一般高齢男性の身体8部位における皮膚の温・冷受容器の感受性を測定し,マラソントレーニングが高齢者の皮膚温度感受性の老化をどの程度抑制できるのか,さらにその身体部位差を検討する.
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Research Products
(8 results)