2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動トレーニングによる高齢者の発汗機能改善特性とその性差
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16H04851
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 博之 大阪信愛学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
天野 達郎 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60734522)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者 / 女性 / マラソントレーニング / アセチルコリン誘発性発汗 / 皮膚温度感受性 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,以下の2実験を実施した.実験(1)では,女性の高齢マラソンランナーと一般高齢者と若年陸上長距離ランナーに対し,アセチルコリン誘発性発汗テストを実施した.女性高齢ランナーは一般高齢女性より,発汗量(SR;前腕:178%,大腿:200%)・活動汗腺数(ASG)・単一汗腺あたりの汗出力(SGO;前腕:140%,大腿:162%)が有意に高かった.しかし,女性高齢ランナーのSR,SGOは,前腕・大腿とも女性若年ランナーより有意に低かった.また,女性高齢ランナーのSRは男性高齢マラソンランナー(昨年度データ)と前腕・大腿とも同等だったが,女性高齢ランナーは男性高齢ランナーより,有意に高いASGと有意に低いSGOを示した.その結果,女性高齢ランナーの汗腺機能は女性若年ランナーよりは劣るものの,マラソントレーニングで亢進し,その亢進の程度は男女ほぼ同程度であることが窺われた.ただし,女性高齢ランナーは男性高齢ランナーより低いSGOを高いASGで補償する特徴が見出された.実験(2)では女性高齢マラソンランナーの身体8部位における温覚・冷覚閾値の熱流束差を一般若年女性と男性高齢マラソンランナー(昨年度データ)と比較検討した.その結果,温覚・冷覚閾値からみた女性高齢ランナーの皮膚温度感受性は,一般若年女性とほぼ同等で,男性高齢ランナーより鋭敏であることが見出された.この結果と先行研究結果(皮膚の温度感受性は若年者では女が男より鋭敏で,その後加齢に伴い男女とも低下し,その性差は80歳代で小さくなる)を考え合わせると,身体部位差はあるものの,1)女性のマラソントレーニングは,加齢に伴う皮膚温度感受性の低下を予防する有効な手段であること,2)60歳代のマラソンランナーでも皮膚温度感受性には性差が存在すること,が推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は研究実施計画通り,女性の高齢マラソンランナー・一般高齢者・若年陸上長距離ランナーおよび男性高齢マラソンランナーのアセチルコリン誘発性発汗,女性高齢マラソンランナー・一般若年女性・男性高齢マラソンランナーの皮膚温度感受性をそれぞれ比較し,運動トレーニングによる高齢女性の発汗およびそれに影響する入力要因の改善特性を検討することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,女性高齢者においても運動トレーニングに伴う発汗反応の改善が運動時の発汗反応にみられるのか検討する.すなわち,女性高齢マラソンランナーにおける(1)運動時の発汗反応,(2)汗イオン再吸収能力,(3)アセチルコリン誘発性発汗,を女性の若年運動鍛錬者と一般若年者と比較し,女性高齢者の運動トレーニングにおける発汗機能改善特性を検討する.(1)(2)の検討は,自転車運動時の胸・前腕・大腿の局所発汗量・活動汗腺数・単一汗腺あたりの汗出力,局所発汗量とガルバニック皮膚コンダクタンスの対応関係を指標とする.さらに,(1)発汗反応特性と(2)汗イオン再吸収能力の関連性,(1)発汗反応特性と(3)アセチルコリン誘発性発汗の関連性も検討し,発汗反応特性や汗イオン再吸収能力特性のメカニズムを考察する.
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Research Products
(12 results)