2016 Fiscal Year Annual Research Report
バラ科果樹における自家不和合性「多因子非自己認識」機構とその進化
Project/Area Number |
16H04855
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐々 英徳 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (50295507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自家不和合性 / バラ科 / ナシ / 花粉 / 雌ずい |
Outline of Annual Research Achievements |
自家不和合性は、雌ずい側因子がS-RNaseであるRNase型が最も進化的起源が古く、様々な分類群に広く分布しているとされている。バラ科においてはサクラ連(オウトウなど)では単一の花粉側因子SFBが自己S-RNaseを認識する「単因子自己認識型」を示すが、興味深いことに我々は、ナシ連(ナシ、リンゴ)では複数の花粉側因子SFBBが非自己のS-RNaseを認識する「多因子非自己認識型」を示すことを見出した。だが、これら2タイプは分子レベルでどのように異なり、なぜバラ科に共存しているのかは不明である。本研究では、ナシ連の「多因子非自己認識型」機構に関与する因子の特定と機能解析を進め「単因子自己認識型」との異同の分子基盤と、バラ科におけるこれらの2タイプの進化的関係を解明することを目的とする。 本年度はナシ連の「因子非自己認識型」自家不和合性の分子機構解析に必要な、花粉S因子SFBBのタンパク質発現系構築を試みた。これまでの研究で大腸菌などの微生物や、タバコなどのナス科植物での一過的発現あるいは形質転換体での発現を試みたが、いずれも発現に成功せず、発現の極めて困難なタンパク質であることが示唆されていた。植物での一過的発現系に様々な改変を加えることで、SFBBタンパク質を発現させることに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
花粉S因子であるSFBBの生化学的機能解析のため、様々なバクテリアや植物を用いてタンパク質発現系の構築に10年ほど取り組んできたが極めて困難で、これまでほぼ全くタンパク質が得られなかった。今年度初めて、植物を用いた一過的発現系の改変により、組換えタンパク質を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた組換えSFBBタンパク質を用い、タンパク質間相互作用解析を行う。十分量のSFBBタンパク質を用いても期待されるタンパク質間相互作用が検出されなければ組換えタンパク質の立体構造が天然タンパク質のものと異なっていることが原因と考えられるため、リフォールディングや、他のタンパク質発現系でのSFBBの発現を試みる。
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