2018 Fiscal Year Annual Research Report
光応答にからむ果実生理へのABA依存性の解明およびABAのオキシリピンへの影響
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16H04872
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
近藤 悟 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (70264918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池浦 博美 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10440158)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アブシシン酸 / イソプロチオラン / エチレン / オーキシン / クロロフィル / グルコース / 香気成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブドウの成熟に及ぼすIPT(イソプロチオラン:イネいもち病防除剤)およびNDGA(ABA生合成抑制剤)の影響を検討した。IPTおよびNDGA処理はブドウ果皮のクロロフィル減少を抑制した。次世代シーケンサー(NGS)を供試したトランスクリプトーム解析の結果、無処理区と比較してIPT処理区では2218遺伝子、またNDGA処理区では2270遺伝子の発現についての相違が認められた。IPT およびNDGA処理は植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)、オーキシンおよびエチレン代謝を制御した。これらの植物ホルモンはいずれも植物の老化に関与する物質である。MapMan解析およびqRT-PCR解析は、ABA代謝経路上でのネオキサンチン酸化開裂酵素遺伝子(VvNCED1:ABA合成に関連するの鍵遺伝子),VvCYP707A1(ABA水酸化酵素遺伝子:ABAの代謝に関連), VvAAO4およびVvGEM様遺伝子がIPTおよびNDGA処理により同様に負に制御されることを示した。さらにIPTおよびNDGA処理は糖代謝経路上のVvSUS, VvAI, VvHT遺伝子を経由して、ブドウの主要な糖であるグルコース代謝を抑制した。さらに、IPTおよびNDGA処理はVvLOX, VvADH, VvGPPS, VvTPSのような香気成分代謝経路上の遺伝子発現を抑制し、香気成分合成も阻害した。これらの結果はIPTおよびNDGA処理が成熟過程において、クロロフィル発現、ABA蓄積、糖合成、および香気成分合成に影響することを示唆する。ブドウは貯蔵性が高くない果実であるがIPTあるいはNDGAの利用により、今後ブドウの貯蔵性を高める技術としての可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回はABA非依存のIPTおよびABA合成抑制物質であるNDGAを供試して、ブドウの成熟に及ぼす影響を、次世代シーケンサー(NGS)で解析を行い、影響を受ける遺伝子を網羅的に解析することができ、計画通りの試験が実行でき成果を得ることができた。NGS解析前はブドウにおけるIPTの作用性については不明であったが、NDGAと極めて類似した作用性を示すことが示唆され、ブドウの成熟制御および貯蔵性向上への実用的な利用について検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
NGS解析により、ブドウの成熟に及ぼすIPTおよびABAの作用性が明らかになったので、今後は光質とABA合成およびABAのシグナル伝達がブドウの成熟に及ぼす作用性を解明する。すなわち、ABAの成熟への関わりが質的なものか、あるいは量的なものかを明らかにする。
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Research Products
(6 results)