2018 Fiscal Year Annual Research Report
カキ果実のタンニン蓄積制御機構の解明とそれを利用した完全甘ガキ育種戦略の構築
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16H04876
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
米森 敬三 龍谷大学, 農学部, 教授 (10111949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 明彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, ユニット長 (30355440)
神崎 真哉 近畿大学, 農学部, 准教授 (20330243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 園芸学 / 果樹 / 渋味 / 果実生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
果実の脱渋特性により分類したカキの4つの品種群の内、突然変異により生じた初期のタンニン蓄積能力の欠損のため、果実生育とともにタンニン濃度が減少し、種子の有無にかかわらず樹上で自然脱渋するタイプが完全甘ガキ(PCNA)である。表現型として完全甘ガキ形質を発現するためには、作用機作が全く異なる2つの遺伝子、すなわち日本タイプの完全甘ガキ形質発現のための劣性のast遺伝子と中国タイプの完全甘ガキ形質発現に関わる優性のCPCNA遺伝子がそれぞれ独立して関与する全く別の2通りの機構が存在する。本研究の目的は、これら機能の異なる2つの遺伝子のそれぞれの遺伝座同定とその遺伝子候補を絞ることである。 これまでの解析から、日本の完全甘ガキ形質の発現に関与するAST遺伝子に関して、甘渋性判別マーカーと表現型の間での組換え個体を発見することができ、D. lotus(マメガキ)を対照とした比較マッピングから、マメガキゲノムの約900kbの領域にAST遺伝子座を特定することができた。ただ、マメガキのこの領域に存在するシークエンス解析からこの領域に存在する遺伝子を特定し、カキでのその経時的な発現を解析したが、甘渋性と直接関係すると思われる遺伝子は特定できず、候補となるような遺伝子は同定することが出来なかった。一方、中国の完全甘ガキの優性遺伝子CPCNAの単離に関して、申請者らはCPCNAに連鎖した分子マーカーをいくつか作出したものの、その座乗領域を遺伝的に特定することができなかった。また、中国の完全甘ガキを親にした交雑により作出した甘渋性分離後代を用いた遺伝子発現の網羅的解析も実施したが、中国の完全甘ガキの甘渋性に関与すると考えられる候補遺伝子を特定することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本タイプの完全甘ガキ形質発現に関与するAST/ast遺伝子座に関して、その遺伝子座領域をマメガキで絞り込むことができたが、カキのその領域に候補遺伝子を特定することができなかった。また、中国タイプの完全甘ガキ形質の発現に関与するCPCNA遺伝子座に関する確実な知見を得ることが出来なかった。このため、全体としてやや遅れていると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の甘渋性制御遺伝子AST/astの同定のためには、今後は六倍体栽培ガキ/二倍体マメガキ間のゲノム構造変異を視野に入れる必要があると考えている。AST座乗領域の多型解析に向けては、異なる位置の多型同士の関係を各相同染色体と紐づけて推定すること (phasing) が必要であるが、一方で、カキを含む同質倍数体は類似した塩基配列を持つ相同染色体を複数セット有するため、phasingが非常に困難である。そこで、カキのゲノム解読に際して、DNAを分子ごとにバーコーディングして解読するlinked-reads法を適用し、個体のハプロタイプ情報を解析することを試みる。一方、中国の完全甘ガキのCPCNA形質は、中国由来の品種の中でも一部品種にのみ見られる形質であることから、小数のCPCNA個体が有するCPCNAアレルに特異的な多型をゲノムワイドに探索することが遺伝子同定にむけた有効な手段であると考えられる。そこで、これまでに作出した分離後代・遺伝資源のCPCNA特異的多型の探索を試み、CPCNA遺伝子座の候補領域の同定を試みる。
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