2016 Fiscal Year Annual Research Report
キクの季節的成長制御機構の解明 -ロゼット形成と花成能力の変化について-
Project/Area Number |
16H04877
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
久松 完 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門 花き生産流通研究領域, 上級研究員 (00355710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 洋平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00746844)
住友 克彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門 花き遺伝育種研究領域, 主任研究員 (70391406)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キク / 休眠 / ロゼット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では未だ解明されていないキクのもつロゼット形成と花成能力の季節的変化について、発現遺伝子プロファイリングによる生理状態の把握を目指すとともに、申請者らが整備したキクの分子遺伝学的解析ツールを駆使して、キクの越冬機構であるロゼット形成/花成抑制機構の解明に取り組み、多年生草本植物のライフサイクル制御機構の理解に貢献することを目的としている。 キクタニギク標準系統で整備が進められているゲノム配列情報をリファレンスとし、越冬機構の解明に適した系統(NIFS-3)での次世代型シーケンサー(NGS)を用いたトランスクリプトーム解析およびChIP-seq解析基盤の構築を進めた。 キクタニギク系統(NIFS-3)の情報を基に作製したカスタムアレイを用い、ロゼット形成時とそれ以外の生育段階(栄養生長期、花芽形成期、長期低温遭遇後)における茎頂部における遺伝子発現を網羅的に解析した結果、ロゼット形成時に特異的な発現遺伝子リストを抽出した。抽出された遺伝子のうち、転写制御因子に着目して全長遺伝子の配列決定、およびリアルタイムPCRによる発現解析をおこなった。 栽培ギク(94-4008系統)を供試し、ロゼット形成時とロゼット打破時の茎先端部の内生GA量の比較をおこなった結果、低温遭遇後、ロゼット打破(休眠打破)され、シュート伸長が再開する時には活性型GA(GA1)の内生量増大を伴うこと、前駆物質の顕著な蓄積は認められないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子遺伝学的解析を進めるためにキクタニギク標準系統で得られたゲノム配列情報をリファレンスとし、キクタニギク系統(NIFS-3)でのNGSを用いたトランスクリプトーム解析基盤の構築を進めた。さらに、ロゼット(休眠)打破には低温遭遇が必要なことから、エピジェネティックな制御の関与が予想される。そこで、ChIP-seq解析によりゲノムワイドなヒストン修飾変化を解析するために条件検討を進めた。 キクタニギク60Kカスタムアレイを用い、長日条件(SD_0W)、短日条件(SD_3W)、長期低温遭遇後(C-SD_3W)、およびロゼット状態(Rosette)の茎頂部における遺伝子発現を網羅的に比較解析した。その結果、SD_3W特異的な発現を示す遺伝子を60、C-SD_3W特異的な遺伝子を105、Rosette特異的な遺伝子を118、それぞれ単離した。花成抑制状態にあるC-SD_3WとRosetteの遺伝子発現プロファイルは大きく異なっていたため、Rosette特異的な発現遺伝子群はキクの休眠誘導・維持に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられた。一部Rosette特異的な発現遺伝子について、形質転換体作出に着手した。 ジベレリン(GA)はロゼット形成したキクのシュートの低温遭遇によるシュートの伸長生長の再開(ロゼット打破)および花成能力の再獲得と密接な関係にあるとされている。そこで、栽培ギク(94-4008系統)を供試し、ロゼット形成時とロゼット打破時の内生GA量の比較をおこなった結果、低温遭遇後、ロゼット打破され、シュートの伸長を再開する時には活性型GA(GA1)の内生量増大を伴うこと、前駆物質の顕著な蓄積は認められないことが明らかとなった。 以上、研究代表者を含む3名の分担者が計画に沿って研究を遂行しており、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
キクのもつロゼット形成と花成能力の季節的変化について、発現遺伝子プロファイリングによる生理状態の把握を目指すとともに、キクの越冬機構であるロゼット形成/花成抑制機構の解明に取り組み、多年生草本植物のライフサイクル制御機構の理解の深化を目指して当初計画に沿って研究を進める。 カスタムアレイ解析によって抽出されたロゼット状態および非ロゼット状態に特徴的な遺伝子群については、今年度新たに得られるRNA-seqデータを統合し、より詳細なアノテーション情報を個別に明らかにし、GO解析等もおこなうことにより、ロゼット形成時の生理状態を包括的に明らかにしていく予定である。 また、抽出されたロゼット特異的な転写制御因子については先行して遺伝子の機能解析に取り組む。さらに、ChIP条件の最適化について検討を進め、ゲノムワイドなヒストン修飾部位の探索に取り組む。 GA関連物質の定量結果をベースにRNA-seqデータ等を統合し、ロゼット形成/打破の鍵となるGA生合成鍵段階の特定を目指す。
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Research Products
(3 results)