2017 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫媒介性病原体のホストスイッチング機構の解明と新規防除技術に向けた基盤構築
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16H04885
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大島 研郎 法政大学, 生命科学部, 教授 (00401183)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / ホストスイッチング / シグマ因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma属細菌)は昆虫媒介性の植物病原細菌である。植物宿主と媒介昆虫との2つの宿主間を水平移動する「ホストスイッチング」により感染を拡大するが、どのようにして異なる生物界の宿主に細胞内寄生するのか、その分子メカニズムは謎に包まれている。本研究は、ファイトプラズマのホストスイッチング機構を解明することを目的とする。ファイトプラズマは植物-昆虫間の宿主転換に伴い様々な遺伝子の発現を変化させることが研究代表者らの以前の研究より明らかとなっている。その転写制御にはファイトプラズマに共通して存在するシグマ因子RpoDが重要な役割を担うことを本研究で明らかにしてきた。一方、遺伝子領域以外の非コード領域においてもRNAの転写が起きているかは不明であった.そこで平成29年度は、ファイトプラズマのゲノムから転写されるRNAを網羅的に特定することを目的として、次世代シーケンサーを用いたファイトプラズマRNA特異的な転写開始点解析系の構築を試みた。まず、タマネギ婆黄病ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma asteris OY strain )感染植物からRNAを抽出した。このRNAには、ファイトプラズマおよび植物由来の転写産物が含まれているが、これらのうちファイトプラズマ由来の転写産物を優先的に精製しcDNA増幅する実験系を構築した。次に、増幅されたcDNAライブラリを次世代シーケンサーを用いて配列解読し、 ファイトプラズマのゲノム配列にマッピングした。その結果、mRNAの転写開始点82箇所に加え、 ORFの内部(センス鎖方向88箇所、アンチセンス鎖方向31筒所)や、下流にORFのない転写開始点30箇所が見出された。これにより、ファイトプラズマにおける非コードRNAの存在が初めて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、転写因子の活性を測定する系を確立するとともに、転写因子が結合するプロモーター領域を特定することを計画していた。大腸菌由来のRNAポリメラーゼを利用したin vitro転写系を確立することができたとともに、この実験系を利用してrrnB上流のプロモーター配列を特定することができた。平成29年度は、ファイトプラズマ由来の転写産物を優先的に精製しcDNA増幅する実験系を構築するとともに、次世代シーケンサーを用いてファイトプラズマのゲノムから転写されるRNAを網羅的に特定することに成功した。当初の計画を達成できたことから、おおむね順調に進展しているとの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ファイトプラズマはRpoDとFliAという2種の転写因子を持ち、植物感染時にはFliA、昆虫感染時にはRpoDの発現量を増加させる。これにより、植物・昆虫それぞれの宿主に寄生するのに必要な遺伝子を転写すると考えられている。本研究により、ファイトプラズマの共通シグマ因子RpoDが認識するプロモーター配列(-10および-35領域)を特定しているが、実際にRpoD により転写されることが確認された遺伝子は限られているうえ、他のプロモーター配列については知られていない。そこで、平成29年度に特定したファイトプラズマのRNA転写開始点の情報をもとにプロモーター配列を探索し、ホストスイッチングに関わる遺伝子の転写機構を明らかにする予定である。
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Research Products
(14 results)