2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物のセンチュウ抵抗性に果たす葉緑体関連物質の役割解明と新規シグナル物質の探索
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16H04888
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
瀬尾 茂美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門 植物・微生物機能利用研究領域, 主席研究員 (80414910)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 病害虫抵抗性 / プラントアクティベーター / 植物保護 / 植物寄生性線虫 / シグナル伝達 / 葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中に生存する植物寄生性センチュウは作物の根等に寄生し生活し、甚大な被害を引き起こす重要害虫である。近年、病原体を直接殺さずに植物免疫を活性化することで防除を発揮する抵抗性誘導物質が着目されているが、センチュウに効くそのような物質はほとんど知られていない。本研究では、先行研究により見出したセンチュウ抵抗性誘導物質候補であるフィトール等葉緑体関連代謝産物の上流・下流で機能する植物因子の同定・機能解析等を通じて作用機構を解明し、当該物質のセンチュウ抵抗性に果たす役割を解明するとともに、根から葉への未知シグナル物質を探索することを目的として研究を行う。本年度は、フィトールの作用機構の解明の足掛かりとして、フィトール応答性遺伝子の同定を試みた。具体的には、フィトールを処理したシロイヌナズナ根において発現変動がみられる遺伝子群の網羅的解析を行った。その結果、植物ホルモンであるエチレン応答性遺伝子が複数見出された。見出されたこれら遺伝子については定量PCRにより発現誘導が起きることが確認できた。エチレン応答性遺伝子の発現誘導が起きることと相関して、フィトールを処理したシロイヌナズナではエチレンの放出量が高まることが示された。病害虫抵抗性に関わる他の植物ホルモンであるジャスモン酸やサリチル酸については、エチレンに対して観察されたこのような表現型は見られなかった。フィトール生成に関与するchlorophyllaseなどの機能が喪失・低下したシロイヌナズナ変異株を用いた抵抗性検定を行ったところ、フィトールによるセンチュウ抵抗性の程度が変化する傾向が見られたことから、来年度再現性を確認する。センチュウ侵入に応じて地上部で起こるクロロフィル分解に関わる新規シグナル物質の探索については、スクラレオール処理根中に地上部のクロロフィル含量の低下を起こす活性を検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィトールのシグナル伝達においてエチレンの関与を示唆するデータを得るとともに、新規シグナル物質についても葉緑体分解活性を起こす物質の存在が検出できるなど、おおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
フィトール生成に関与するchlorophyllaseなどの機能が喪失・低下したシロイヌナズナ変異株を用いた抵抗性検定については、初年で得られた結果の再現性を確認する。新規シグナル物質については、その存在が検出できた物質の精製を進める。
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