2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H04890
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 彰 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50231098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌学 / 土壌圏現象 / 炭素循環 / 環境 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)名大附属農場厩肥多施用区、慣行区から採取、保管されてきた土壌試料について13C NMRスペクトルの測定と逐次重液処理によるSOCの遊離型、吸蔵型、比重の異なる2種の結合型の4画分に分画した。13C NMRスペクトルは、慣行区でO-アルキルCの割合が減少し、カルボニルCが増大する傾向を示したが、変化は小さく、厩肥区ではC組成の変化はさらに不明瞭であったことから、SOCの安定性を増大させる化学構造の変化や選択的集積は起こらなかったと推定された。また、比重分画の結果、SOC量の増大は、遊離型、吸蔵型、比重1.6-2.0の結合型SOCの順に進み、最も安定な形態と考えられる比重>2.0の結合型SOCはほとんど形成されないことが明らかになった。 2)腐植化度の低いRp型フミン酸を安城水田土壌から抽出・精製し、火山灰と混合後、異なる温度条件で培養した。6ヶ月の時点では、黒色度が若干増大した程度であり、培養を継続いている。また、タンニンのモデルとしてピロガロールを用い、常温・弱酸性条件下で火山灰と反応させた結果、A型フミン酸様物質の生成が認められ、特に火山灰を予め滅菌した際に収量が高かった。しかし、メチル化熱分解GC/MSによる成分解析では、脱OHやベンゼン環の開裂が観察されたものの、A型フミン酸の特徴である縮合芳香族成分は検出されなかった。 3)中国上虞市に分布する推定水田利用歴30-2000年の作土試料を3ヶ月間培養し、経時的にCO2生成量を測定することでSOC分解速度を比較した。また、耐水性団粒4画分に分画し、重量とC含量を測定した。水田利用年数の増大はマクロ団粒3画分の相対含量を増大させ、300年以降はそれらのSOC含量も増大した。培養実験におけるCO2発生速度も水田利用年数が長い土壌で大きかったが、全SOCあたりの分解率には顕著な差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4つの課題から構成されており、本年度に関しては3課題の実施を予定していたが、試料入手の関係から次年度開始予定だった課題を先に開始した。しかしながら、差し替えた課題を含め、1年目の進捗としては十分であったことから、全体的におおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
厩肥連用圃場のアーカイブ土壌については、各比重画分中のSOCの構造特性解析を継続し。また、厩肥と土壌有機物の窒素安定同位体比の違いを利用して、厩肥由来有機物蓄積量の推定を試みる。中国水田土壌については、団粒分画後各画分の培養試験と各画分中のSOCの構造特性解析を行って、実際に団粒分布の変化がSOCの安定化に寄与しているかどうかを確認する。また、腐植化の進行に対する火山灰の触媒効果の検証に関しては、Rp型フミン酸と火山灰との混合培養を継続し、13C NMRや酸化ルテニウム酸化分解分析を用いて構造変化を明らかにする。土壌に施用されたバイオ炭の動態については、施用終了後数年を経た圃場から土壌を採取し、比重分画法によりバイオ炭の残留量と形態を評価する予定である。
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