2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive study of molecular interaction between bifidobacterium-host intestinal cell
Project/Area Number |
16H04896
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鈴木 徹 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20235972)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | プロバイオティクス / 腸内細菌叢 / 遺伝子破壊 / 細胞間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビフィズス菌は、整腸作用、免疫賦活、感染防御を通じてホストの健康に貢献すると考えられている。しかしその腸管定着および免疫刺激の分子メカニズムは未だ明らかにされていない。我々は、これまでに本菌がもつ環境適応と細胞接着に関わると推定される遺伝子について破壊株コレクションを作成してきた。本研究では、これらの破壊株コレクションを用いることで、ビフィズス菌の宿主への定着および免疫刺激のメカニズムの解明に取り組み、ビフィズス菌-ヒト共生システムを細胞接着と免疫刺激のメカニズムの統合的理解を目指した。 本研究に用いるツールは、我々がこれまでに開発してきたビフィズス菌の温度感受性プラスミド、GoldenGate法を改良した多遺伝子結合法、プロモーターの最適化法を組み合わせ、ダブルクロスオーバーによる遺伝子破壊を高効率で行う方法を構築した。これを用いて、ビフィズス菌における高効率の遺伝子破壊系を構築した。 ビフィズス菌には、複数の二成分制御系(TCS)調節遺伝子が存在している。本菌は、これらを用い様々な環境に適応していると考えられる。Bifidobacterium longum NCC2705株の場合、9セットのTCSを有していた。今回は、これらのうちレスポンスレグレーたを系統的に遺伝子破壊株のコレクションを作成した。 また、腸管とビフィズス菌のインターラクションに重要な役割を有すると考えられる、菌体表層の細胞外多糖(EPS)生産系の遺伝子破壊株を取得した。 これらを用いて、腸内環境の定着機構について解析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ビフィズス菌には、複数の二成分制御系(TCS)調節遺伝子が存在している。本菌は、これらを用い様々な環境に適応していると考えられる。Bifidobacterium longum NCC2705株の場合、9セットのTCSを有していた。今回は、これらのうちレスポンスレギュレータ遺伝子を系統的に破壊したコレクションを作成した。現在までに7つのRRの破壊株を取得している。これらを用いて、酸素耐性(体外)、低pH耐性(胃)、胆汁酸耐性(十二指腸>小腸>大腸)低栄養(大腸)、高浸透圧(大腸下部)の環境をミミックした培養条件で、生育させたところ、それそれのTCSが、どの県境に対応しているかの関係づけをすることができた。 また、莢膜多糖(CPS)生産系の遺伝子破壊株については、B.longum 105-Aが有する特異的なEPS構造を生産させる鍵となる、プライマーゼcpsD遺伝子の破壊株を作成したところ、この変異株は、完全に表層の多糖層を失い、凝集性が高まり、酸、胆汁酸に対する耐性が低下した。また、Caco-2細胞への接着性が高まり、マクロファージに取り込まれやすくなることを明らかにした。またCPS層が消失した、ΔcpsD下部では、多糖層の代わりに繊毛が出現していることが観察された。これらの事から、B.longum生産する菌体外多糖は、従来考えられていた細胞への接着に寄与するという説は否定され、むしろ、胃から小腸にかけて、腸管への接着を妨げ、大腸への移送させ、その後、大腸の低栄養状態において、繊毛を発現させ、大腸表層に定着すると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Bifidobacterium longum NCC2705の二成分制御系に関しては、それぞれの遺伝子破戒株については、そのレスポンスレギュレータの支配下にある遺伝子を、RNA Seqを用いて特定を試みる。これらの遺伝子候補を用い、野生株と破壊株とで発現の異なる遺伝子のプロモータをクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の上流につけ、pKKT428に導入する。CATをレポータ遺伝子として、これらの候補遺伝子の発現調節について詳細に評価する予定である。 また、二成分制御系の破壊株を、マウスに摂取することによりこれらの腸管定着性について詳細に検討する予定である。
|