2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集法 により作製した遺伝子改変ラットを用いたビタミンD誘導体評価系の構築
Project/Area Number |
16H04912
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
中川 公恵 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (90309435)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビタミンD / シトクロムP450 / ビタミンD受容体 / ゲノム編集 / 骨粗鬆症 / 遺伝子改変ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集法によりビタミンD受容体(VDR)およびビタミンD代謝に関わる酵素(CYP27B1およびCYP24A1)の遺伝子欠損あるいは遺伝子改変ラットを作製し、ビタミンD 作用メカニズムの全貌を明らかにするとともに、種々のビタミンD誘導体の代謝様式と作用メカニズムを解明することにより骨粗鬆症や癌などの治療薬を開発することを目的とする。VDRは、骨代謝、細胞分化・増殖、免疫機能などに関する多くの遺伝子の発現を制御する。また、CYP27B1はVDRのリガンドになる活性型ビタミンDを作る酵素で、CYP24A1はこれを不活化する酵素である。本研究の成果は1a,25-ジヒドロキシビタミンDのみが天然の活性型ビタミンDであるという従来の定説を覆し、新たな医薬品を生み出す原動力になると考えている。 28年度は以下の遺伝子組換えラット系統を確立することができた。 ①CYP27B1ノックアウトラット(CYP27B1-KO)②CYP24A1ノックアウトラット(CYP24A1-KO)③VDRノックアウトラット(VDR-KO)④変異型VDR(VDR-R270L)発現ラット。CYP27B1 KOラットは離乳後の発育不全や骨密度の低下など、くる病様の所見を呈し、メスに生殖周期不全が認められた。生後6週齢のKOラットに25D3を連日投与すると、高カルシウム血症を呈さずに骨密度が上昇し、生殖機能も回復した。また、VDR KO ラット、VDR(R270L) ラットともに、骨形成異常が見られ、VDR KOラットには脱毛が見られた。一方、研究分担者の橘高は2α位に置換基を有する新規ビタミンD誘導体を複数合成した。その中にはビタミンD受容体に対する親和性が高く有望なものが含まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた4種の遺伝子改変ラットすべての作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は以上の4系統について、詳細な性状解析、特に骨組織、軟骨組織の解析に注力するとともに、25(OH)D3、1a,25(OH)2D3、24,25(OH)2D3の投与効果を評価する。また、以下のダブルノックアウトラットの系統を確立する。 ①CYP27B1とCYP24A1ダブルノックアウトラットの作製。①と②の交配で得られたF1同士の交配により1/16の確率で産まれる。内在性の1a,25(OH)2D3の作用およびCYP24A1による代謝の影響を受けずに、25(OH)D3、24,25(OH)2D3および種々のビタミンD誘導体の生理作用を評価できる。②CYP27B1とVDRダブルノックアウトラット(CYP27B1・VDR-二重KO)の作製。①と③の交配により作製する。VDR-KOマウスにおいてはVDRを介したCYP27B1遺伝子の発現抑制機構が解除されるため、血中の1a,25(OH)2D3濃度が上昇する。したがって、VDR-KOラットにおいては1a,25(OH)2D3のgenomic作用が見られず、nongenomic作用が顕著に現れるはずである。一方、VDR-KO・CYP27B1-二重KOラットは、1a,25(OH)2D3のgenomic、nongenomic作用ともに見られないことからVDR-KOラットとの比較により、1a,25(OH)2D3 のnongenomic作用が明らかになると推測している。一方、研究分担者の橘高は28年度の成果を踏まえ、さらに新規な誘導体の作製を試みる。
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