2016 Fiscal Year Annual Research Report
Collective synthesis of biologically active natural products by means of cascade reaction
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16H04915
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西川 俊夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90208158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中崎 敦夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00366428)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 連続環化反応 / ゼテキトキシン / グアンジニン / サキシトキシン / セスペンドール / インドールアルカロイド / チャキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
天然有機化合物(天然物)を医薬、農薬や生物学研究のツール分子として利用しようとすると、常にその量的供給が問題となる。本研究では、顕著な生物活性を示すことが明らかになっているにも関わらず、天然からの供給と誘導体合成が困難なため有効利用が進まない天然物を、連続反応によって中心骨格を効率よく構築し、短工程による化学合成法を確立する事を目的とする。初年度は、矢毒カエルの毒ゼテキトキシン(ZTX)、インドールアルカロイド セスペンドール、破骨細胞形成阻害活性を示すチャキシンの3つの天然物の合成ルートへの連続反応の組み込みを検討する計画であった。 ZTXの合成では、海産毒サキシトキシン(STX)と同一の三環性骨格に含まれるspiro-アミナール構造を、グアニジノアセチレンのブロモカチオンを使った連続環化反応で一挙に合成する事に成功した。さらに、この生成物からSTXの天然類縁体であるdecarbamoyl-α-saxitoxinolの全合成に成功した。 セスペンドールの合成では、イソプレニル側鎖を含んだインドールのベンゼン環部分(芳香環セグメント)の光学活性体の短段階合成に成功した。 チャキシンの合成では、エルゴステロールから得られるフラン中間体のMCPBA酸化による酸化的連続反応を開発し、得られたエノールエステルのエポキシ化によって、チャキシンB、Cの合成に成功した。合わせて、報告されていたチャキシンB,Cと類縁体の天然物の構造を訂正した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
矢毒カエルの毒ゼテキトキシン(ZTX)、インドールアルカロイド セスペンドール、破骨細胞形成阻害活性を示すチャキシンの3つの天然物の合成を検討した。 ZTXの合成は、計画通り研究が進展している。まず、連続環化反応の前駆体の窒素求核基を検討した。様々な窒素求核基を検討した結果、グアニジンと合成的に等価なウレアとすると、連続反応が首尾よく進行し、さらにその後のSTX骨格への変換反応が可能になることが分かった。連続環化生成物から6員環グアニジン(A環)への変換のために、末端1,2-ジオール部分を酸化切断する必要があったが、A 環形成後にニトリルを導入することで、STXの合成に必要なヒドロキシメチル基の導入に成功し、STXの天然類縁体であるdecarbamoyl-α-saxitoxinolの全合成にも成功した。 セスペンドールの合成では、芳香環セグメントの光学活性体の合成に注力していたため、連続環化反応の検討に至らなかった。しかし、今期開発した芳香環セグメントの光学活性体合成は、ラセミ体合成を上回るきわめて効率のよいもので、グラムスケールの供給が可能である。本法は、両鏡像体、およびジアステレオマーも合成でき、将来の網羅的合成の基盤となるものである。 チャキシンの合成は、予定を上回る進展をみせ、エルゴステロールから得られるフラン中間体を使った酸化的連続反応の開発と3つの天然物の合成、構造訂正をすべて完了した。エルゴステロールから、総工程数7段階の短段階合成法が確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼテキトキシン(ZTX)の合成では、初年度に合成したサキシトキシン(STX)の三環性骨格をもった中間体へZTX合成に必要なイソオキサゾリンを含む側鎖部分を導入する方法を開発する。一方、STX関連化合物の網羅合成に向けて、連続環化反応の生成物スピロアミナールを使って、様々なSTX 関連化合物を合成するルートを開発する。特に、初年度開発したA環のウレアをグアニジンに変換する反応条件が、今後の様々な類縁体の合成を困難にすると考えられるので、より温和な条件でA環グアニジンが構築できる方法を開発する。 セスペンドールの合成では、連続環化反応の開発に取り組む。まず、セスキテルペンセグメントの光学活性体合成法を開発する。モデル基質ではなく、このテルペン部分の構造がセスペンドールと同じ基質を使って、環化反応の条件を検討する。パラジウム触媒、銅触媒、銀触媒、金触媒など、アセチレンを活性化できる金属触媒を検討する。 チャキシンの合成は、一応の決着を見た。現在行われている生物活性評価の結果を待って、大量合成、類縁体の合成を進める計画である。
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Research Products
(16 results)