2017 Fiscal Year Annual Research Report
食品の水和構造の可視化と分子運動性の解析による、水分活性が意味する水和状態の解明
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16H04928
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中川 洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究副主幹 (20379598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 食品物理学 / 水分活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な水分量で行ったタンパク質の分子シミュレーション結果から、水分量の増加に伴って変化する水和水の動態を解析した。その結果、水分量の増加に伴う水和水の水素結合のクラスターがタンパク質表面で大きくなり、そのような水素結合状態の変化が水素結合の寿命に関係していることが分かった。具体的には、水分子が関与する水素結合の組み方によってそのダイナミクスが変化することが分かり、そのような水分子の水素結合のつながりが本質的となる水和構造の状態が、水和水ダイナミクスの物性発現に重要であることが分かってきた。さらにこのような変化はバルク水では見られないことを確認し、タンパク質表面で束縛されることで発現する水に特徴的な動態の存在を示唆する結果が得られた。このような食品分子との相互作用で変化する水素結合ダイナミクスの不均一性が、水分活性の解釈に重要と考えている。さらに、水分量を変化させたタンパク質を用いて近赤外分光測定を行った。その結果、水和水由来と思われるシグナルを検出することができた。この近赤外分光実験では、試料環境として拡散反射法がより高品質なシグナルを検出できるこが分かってきた。この近赤外分光スペクトルには水の水素結合状態の違いなどに関する情報が含まれている可能性があるが、水素結合ダイナミクスの不均一性に由来して、様々な状態の水和水由来のスペクトルが重なり合って見えていると考えられる。現在のところスペクトルの解析方法やデータ解釈については考察中であるが、水分量を変えたスペクトルを総合的に解釈することで水和水の不均一状態の解析につなげていることが重要であると考えている。またDSCにより水和蛋白質や澱粉のガラス転移が測定できることを確認できているため、これまでの様々な実験データや分子シミュレーションによる解析結果などと総合して水和状態を解析していくための手掛かりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの示差走査熱量計(DSC)やフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)による解析に加え、分子シミュレーションや中性子散乱データと総合して議論できる状況になり、水分活性を理解するための解析が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、近赤外分光測定のスペクトルの解釈などのデータ解析を進めることで食品中の水の状態を解析したり、分子シミュレーションによる水素結合ダイナミクスのより詳細な解析を進めたりして、水和の観点から食品のミクロ構造を調べ、水分活性の分子論的な解釈につなげていく。
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