2016 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸・水安定同位体組成を指標とした温暖多雪森林流域における窒素循環の定量的評価
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16H04947
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
伊藤 優子 国立研究開発法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (60353588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 祥平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70700152)
高瀬 恵次 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (90133165)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三酸素同位体 / 積雪 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
石川県農林総合研究センター林業試験場内(石川県白山市)の森林理水試験地において、水フラックスの観測および物質動態観測を通年行った。本年度は、2013 年より開始している観測を継続し、観測箇所、項目の追加や新設を検討・整備した。 水フラックス観測は量水・気象観測施設による流域の高精度な水収支観測を行い、流域内での樹冠遮断量の観測および冬期は積雪調査を行った。物質動態観測は、林外雨(降水、降雪)、林内雨(雪)、堆積有機物層通過水(テンションフリーライシメーター)、土壌水(5, 25, 55, 90 cm)、地下水、流出水の試料を月1~2 回程度(但し積雪・融雪期は高頻度)採取した。採取した試料はpH, EC, 主要無機成分、微量元素、溶存有機態窒素、溶存有機態炭素分析を行った。また、大気汚染物質の起源の指標として安定同位体組成の測定を行った。降水および土壌水中の硝酸の三酸素同位体組成(Δ17O)値には季節変動性が見られたが、地下水および流出水は概ね一定の値を示した。 本年度は積雪期前に林内に地温センサーを4深度(0, 5, 25, 50 cm)に埋設した。また、12~3月の期間において流域末端の量水堰に自動採水装置を設置し高頻度で流出水試料の採取を行った。2016-2017年の積雪は12月中の積雪量が非常に少なく、林内の積雪継続期間も短期間であった。1月下旬の積雪調査では林外で60cm程度、林内では50cm程度であった。本年度の積雪期間の採取試料の分析および解析を早急に行い、2017-2018年の積雪期間の観測の最適化を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地における観測および試料採取はほぼ計画通り進んでおり、各試料の成分分析および硝酸の安定同位体分析はほぼ計画通りである。降水だけでなく地下水および流出水中の低濃度硝酸試料に関しても精度よく分析できている。一方、水安定同位体測定に関しては分析が少し遅延しているため、冬期に高頻度で採取した試料について早急に分析および解析を進める必要がある。また、対象流域の2016-2017年の積雪量は平均より少なかったため、積雪-融雪が流域の水・物質動態に及ぼす影響がクリアに表れていない可能性もあるため、観測頻度等の検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年以降も物質動態観測を継続し、研究対象流域の窒素フラックスをコンパートメントごとに算出する。また、窒素安定同位体の結果と併せて流域内の窒素動態の定量的評価を行い、大気由来硝酸および再生産硝酸の挙動を明らかにする。 地温データの回収および解析を行い、積雪期間中の窒素動態(濃度、同位体組成の変動)とその変動プロセスの解析を行う。また、自動採水装置で高頻度に採取したサンプルの分析および水フラックス観測結果を解析し、対象流域における積雪-融雪による水・物質動態への影響評価を行う。
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