2016 Fiscal Year Annual Research Report
イメージング技術を用いた南根腐病による樹木枯死メカニズムの生理学・組織学的解明
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16H04948
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
矢崎 健一 国立研究開発法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 祐子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60343802)
佐橋 憲生 国立研究開発法人森林総合研究所, きのこ・森林微生物研究領域, チーム長 (10202102)
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 画像診断 / 南根腐病 / 小笠原 |
Outline of Annual Research Achievements |
南根腐病は、担子菌類(キノコ)であるPhellinus noxiusを病原とする樹木の病害で、樹木の根に感染することで、葉の変色や枝枯れを引き起こし、やがて枯死に至らしめる。熱帯地方に広く分布し、大規模な集団枯損を起こす病原菌である。しかしながら、南根腐病に罹病した樹木が枯死する病理学的なプロセスについては明らかになっていない。本研究では、南根腐病の病状の進行過程と、宿主樹木の生理反応や解剖学的特性の変化を解明する。また、接種試験による脆弱性樹種のスクリーニング、感染個体の環境要因への反応特性を実験的に明らかにし、野外における実際の病徴の状況と照合することで、実体に即した南根腐病の枯死メカニズムを明らかにすることを目的とする。 初年度は、シャリンバイの苗木にP. noxiusを接種し、気孔コンダクタンスや木部通水特性の経時変化を調べた。また、得られた組織サンプルより凍結切片を作成し、F-WGA染色によるP. noxiusの樹体内感染状態と、木部内の水分状態を観察した。その結果、接種後2-3ヶ月でほぼ全個体が枯死した。気孔コンダクタンスは接種木で若干低い傾向で推移した。F-WGAによる蛍光染色でP. noxius菌糸が可視化でき、葉が褐変した個体においては、木部の道管内腔まで菌糸が侵入していた。一方、cryo-SEMで同部位を観察した結果、木部内に多くの水分が保持されていた。このことは、P.noxiusによる枯死がキャビテーション以外の原因で生じた通水阻害によるものと推定された。 小笠原諸島父島・母島における南根腐病調査地における病害の進行状態を調査し、乾燥地で被害がより進行していることを確認した。また、調査地の気温や土壌水分などの経年モニタリングの準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接種試験による実験は順調に進行しており、現在次年度の接種試験の準備をしているところである。小笠原における病害の実態調査は、最低でも年一回は確実に実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の接種実験の結果を踏まえ、キャビテーション以外の通水阻害要因を比較できる実験系を検討する。本病は進行速度に個体差が大きいことから、初年度に確立した菌の可視化手法により、樹体内の菌の進行状態に対する、根・葉の各種生理特性を比較することで、病徴進行に対する生理・形態特性変化を追跡する。本病に特異的な生理特性を探索し、罹病木の診断を目指す。
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