2017 Fiscal Year Annual Research Report
ネオニコチノイド系農薬の海産甲殻類への種特異的毒性機構の解明と沿岸生態リスク評価
Project/Area Number |
16H04962
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (30621057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 克敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (80450782)
三木 志津帆 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 任期付研究員 (80780577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド系農薬 / 海産甲殻類 / 種特異的毒性 / 沿岸生態リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
計画1)瀬戸内海西部沿岸干潟域において沿岸調査により計74検体、沖合調査計24検体を採水した。分析の結果、NNIは農薬頻用期(6-9月)に高頻度かつ高濃度で検出され、使用量の多いジノテフラン(Din)は沿岸沖合10kmの表層水でも検出された。計画2)28年度に開発した漁具が、タモ網での調査に比べ極めて高い採捕効率を示すことを明らかにした。 計画3)海産甲殻類を用いた毒性試験:沿岸干潟域での調査から、クルマエビ、エビジャコ、に加え、クロイサザアミが多く観察された。毒性試験に供する十分量の生物量の確保が困難であったため、代替種として海産アミ(Americamysis bahia)を用い、NNI毒性試験を行った。その結果、NNIに対する海産甲殻類の感受性は一部のNNIを除き概ねクルマエビ=アミ>エビジャコであった。 計画4)感受性の種間差が生じるメカニズムの解明 ①RI標識NNIを用いた体内動態分布の種間比較: RI標識したNNI(アセタミプリド、クロチアニジン)を用いた毒性試験を行った。曝露した個体の一部でパラフィン切片を作成し、室温で50日間露出後、イメージングアナライザーに供した。その結果、生物体内から放射線強度は検出されたものの、バックグラウンド値が予想以上に大きく、両種の体内分布の差異の検出には至らなかった。 ②アセチルコリンレセプター(AChR)の種間比較:陸上昆虫の既往研究において、NNIへの高感受性種と低感受性種において、AChR結合部位のLooP D領域の配列に差異が生じていることが明らかになっている。そこで、これらの現象がクルマエビ、エビジャコで生じているかを確認するため、当該領域の塩基配列を決定した。その結果、両種とも高感受性種の配列と一致していた。以上の結果から、当該領域の配列からは、クルマエビ、エビジャコは高感受性種に分類されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沿岸干潟調査では、当初の計画を上回る96検体(計画 40検体/年)をサンプリングし、最終年度の環境中濃度予測の高精度化に資するデータを着実に蓄積している。また、3種の海産甲殻類を用いて7種のNNIに対する毒性値を算出し、感受性差を明らかにした。特に干潟調査において得られたクルマエビの河口干潟域における動態及びクルマエビの毒性試験結果については、学術論文として発表し、成果を着実にあげている。感受性の種間差の解明には、RI標識試験において露出時間の検討など翌年に繰り越す課題も残ったが、アセチルコリンレセプター(AChR)の塩基配列をクルマエビとエビジャコで決定し、種間差との考察を行うなど当初の計画を着実に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)、2)沿岸干潟調査では、調査を継続しデータを蓄積することとしている。 3)本研究によって得られた海産甲殻類3種(クルマエビ、エビジャコ、海産アミ)の毒性値データをもとに、毒性発現の構造式等から、毒性予察に資する考察を行う。 4)RI標識NNIを取り込ませた甲殻類種において、露出時間の検討を起こったうえで、NNIの組織ごとの分布量を定性的に比較し、両者の差異を考察する。さらに、組織切片の観察等により、より詳細な考察に資する。クロイサザアミ、米国産海産アミのアセチルコリンレセプター(AChR)D-loop領域の塩基配列を決定し、他の海産甲殻類との差異を検証する。 5)以上の結果を取りまとめ、NNIの沿岸干潟域における生態リスク評価を行う。具体的には、沿岸域で影響を受けていると考えられる海産甲殻類の割合を予測影響割合等により数値化を行い、定量的なリスク評価に資する。
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Research Products
(4 results)