2016 Fiscal Year Annual Research Report
微生物ループを利用するスルメイカの初期生活史の解明
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16H04963
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 潤 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (10292004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 亨介 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (00399114)
柳本 卓 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (30443386)
中屋 光裕 北海道大学, 水産学部, 特任助教 (80604313)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スルメイカ / 初期餌料 / 微生物ループ |
Outline of Annual Research Achievements |
主に下記の成果を得ることができた。
1. 北海道津軽海峡周辺で採集した成熟途中のスルメイカを水槽内で8-10 月の間、函館市国際水産・海洋総合研究センター内の10 トン水槽で給餌飼育し成熟させた。9月下旬から10月中旬にかけて、予め自然海水を流入させて天然の有機懸濁物、バクテリア、原生生物を取り込んでおいた同センターの大型水槽(150トン)に成熟メスを移し、自然産卵された卵塊を安定的に得た。これらふ化させて大型水槽内遊泳させ何らかの餌料を取り込み成長した幼生を採集した。 2.上記の大型水槽内で自然産卵させた卵塊、卵塊からふ化し自由に遊泳させた幼生の消化腺、飼育水、親イカの排泄物、同纏卵腺さらにアオリイカの副纏卵腺内の菌相のメタゲノム解析(16SrDNAのv4領域を増幅)を行った。これに加え、秋季に日本海南西海域から東シナ海北部で採集された天然スルメイカ幼生の消化腺内容物を同様にメタゲノム解析を行い、前述の菌相と比較した。その結果、水槽内で飼育した幼生と卵塊の菌相は異なり、また天然幼生と飼育幼生の消化腺内の菌相も異なっていたことが明らかになった。さらに、上記の天然海域で採集された幼生の消化腺内要物を次世代シーケンサーで解析(ミトコンドリアDNAのCOIを増幅)した結果、カイアシ類やクラゲ類などが検出された。 遺伝解析の結果から幼生の初期餌料となりうる生物の候補を挙げることができたが、これらの生物が消化腺内に確実に存在することを示すには、今後、FISH法などの手法を用いて検証する必要との方針を立てるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、親イカの確保、飼育、天然卵塊の産出とほぼ計画通りに試料を得ることができた。 遺伝解析の結果から水槽で飼育したした幼生と天然海域で採集した幼生の餌料候補となる生物を特定することができ順調に計画は進展しているが、これら餌料の候補となる生物が実際に餌料としているのかを明らかにするには、FISH法などを用いて消化腺内に確実に存在することを示す必要があると考えられた。 今年度はスルメイカの漁獲が減る予想がされている。できるだけ早い時期に親となるスルメイカを確保し成熟させて実験に臨む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度には,目標を達成する為に以下の研究を行う。 1. 大型水槽内での卵塊と幼生の入手。具体的には,①8-10 月の間、採集したスルメイカを函館海洋センター内の10 トン水槽で給餌飼育する。②同センター内の大型水槽に自然海水を流入させ 天然の有機懸濁物、バクテリアなどを取り込んでおく。③大型水槽内で成熟メスから卵塊を安定的に産出させる。 2. 卵塊に付着する微生物相の把握:卵塊およびその分泌器官に存在する微生物を捕食すると仮定して下記を行う。①同上、産卵させた卵塊から卵を含む組織を取り出す。②経時的に卵塊および卵塊内の親魚由来の有機物に存在する微生物を分離してDNA を抽出し,メタゲノム解析によって同上組織に付着した微生物の菌相の特定を試みる。 3.消化腺容物の微生物相の把握:卵塊から離脱して自由に遊泳する幼生の消化腺内容物について調べる。具体的には①水中内に分布する有機懸濁体に存在する微生物を捕食すると仮定し,成長ステージ毎にその消化腺内容物を摘出して遺伝解析用サンプルを採集する。③同様に実際の産卵場で採集された幼生の消化腺内容物も収集する。④これらサンプルからDNA の抽出と増幅を行いその消化腺内容物の特定を試みる。 4.ふ化幼生の給餌飼育の試みと生残好適環境の検出: 卵塊から離脱した幼生は水柱内の有機懸濁物(これに存在するバクテリアも含む)、もしくは浮遊するバクテリアを餌料としていると仮定し大型水槽内および小型水槽を用いて幼生を飼育する。具体的には①植物プランクトンもしくは,纏卵腺を曝気し有機懸濁物を作成する。②大型水槽内で産卵させた卵塊から離脱する幼生を大量に集める。③集めた幼生を小型の水槽に移し、これに作成した有機懸濁物を加え飼育し,異なる有機懸濁物の実験区に分けて成長と生残の差異とその変化を調べる。③ 自然海水での飼育法の評価と給餌幼生の生残の好適環境の特定を試みる。
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