2016 Fiscal Year Annual Research Report
魚類卵膜軟化症の発症・促進機構の解明に基づく防除技術の確立
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16H04964
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠井 久会 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50399995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 隆一 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (20265721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵膜軟化症 / サケ |
Outline of Annual Research Achievements |
卵膜軟化症は,サケ増殖事業における卵期の主な減耗要因の一つである。本病の発症原因および機構は解明されておらず,発症の程度を表す明確な指標も定められていない。本年度は,卵膜軟化症の発症原因を明らかにするために,サケ卵を異なる環境にて管理し,卵膜軟化症の発生状況を比較することで,発症要因の絞り込みを行った。さらにその各管理条件において,受精から孵化までの卵膜を経時的に観察することで,卵膜軟化症の発症機構の推定を行った。加えて,卵の物理的耐性を評価することで卵膜軟化症の発症指標の設定を試みた。その結果,同一親魚卵であっても管理環境により発症状況が異なり,卵膜軟化症が恒常的に発生する施設由来の卵を移送した場合も,移送先での発生が認められなかった。さらに,卵膜軟化症が恒常的に発生する施設においてろ過精度0.2 micrometerの微生物除去フィルターでろ過した水を注水して卵を飼育した場合,卵膜軟化症の発症が抑制された。加えて,卵膜の電子顕微鏡観察の結果,どの環境においても細菌は観察されたが,卵膜軟化症発症卵では卵膜表面に無数の桿菌が観察され,卵膜を侵蝕する様子を確認することができた。これらの結果から,卵膜軟化症は親魚由来の因子や卵内の胚の発生異常などによるものではなく,外部環境由来の細菌によって卵膜が表面から溶解されることで発症することが明らかとなった。また,正常な卵では,授精からふ化直前まで30-40 Nの卵破断強度を保つが,卵膜軟化症発症時には卵破断強度が著しく低下し,5 Nを下回ることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育現場の協力のもと,計画通り卵の交換飼育が実施され,卵膜軟化症の発症および促進の原因が飼育環境由来の細菌であることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しており,当初計画の通り研究を推進する。今後は,卵膜軟化症の原因細菌の特定を目指し,得られた知見を疾病予防に繋げていく。
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