2018 Fiscal Year Annual Research Report
魚類卵膜軟化症の発症・促進機構の解明に基づく防除技術の確立
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16H04964
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠井 久会 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50399995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 隆一 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (20265721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サケ / 卵膜軟化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵膜軟化症は,サケ増殖事業における卵期の主な減耗要因の一つである。本年度は,恒常的に卵膜軟化症が発症する施設と発症歴のない施設に卵を収容し,経時的に卵膜タンパク質を観察することで卵膜軟化症の動態を検討するとともに,両事業所の飼育水成分を比較することで,発症環境に特有の物質を探索した。加えて,カテキンおよび各種ポリフェノールに予め卵を浸漬することよる卵膜軟化症防除効果を比較した。 SDS-PAGEやLC/MS/MS分析により得られたトータルイオンスペクトルの比較により,孵化時のような卵膜の分解が早期の段階で起きていること,さらに本病による卵膜の分解が孵化時の変化と類似するが同一ではないことを明らかにした。加えて,発症卵膜およびふ化後卵膜由来のバンドにおけるN末端アミノ酸配列を明らかにし,得られた切断部位の情報から,卵膜の溶解に関与しうる酵素を推定した。さらに,LC/MS/MSを用いて飼育水中における低分子物質を検出し,発症環境に特異的な成分を抽出することが可能であることが明らかとなった。卵膜軟化症の防除においては,カテキン2種(EGCおよびEGCg)のうち分子内にガロイル基を含むEGCgがより予防効果が高いものの,ガロイル基単体物質である没食子酸には予防効果を認めなかった。タンニン酸およびテアフラビンはカテキンよりも低濃度の条件下において高い防除効果を発揮したことから,ガロイル基とこれを含むポリフェノール構造の違いが防除効果の程度に影響を及ぼすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵膜軟化症発症時の卵膜タンパク質の変化について新規の知見を得るとともに,防除効果が認められる薬剤の特性や化学構造から本病の抑制機序を推定し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しており,当初計画の通り研究を推進する。今後は病原体の分離培養について検討を進める。
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Research Products
(2 results)