2018 Fiscal Year Annual Research Report
南限域に母川回帰するサケの温度適応機構の解明と温暖化への応答予測
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16H04968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 貴士 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50431804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野畑 重教 東京大学, 大気海洋研究所, 特任助教 (00526890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サケ / 温度適応 / アデノレセプター / 心筋 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,2016年度~2017年度にかけて北上川で収集した結果を集計した。その結果,10月の上旬に脇谷洗堰で捕獲され,放流したサケは北上川中流域,あるいは中流域の支流で繁殖していた。10月の下旬以降に放流したサケは狭窄部 (旧北上川河口より53-86 kmの区間) あるいは,狭窄部の支流で繁殖する傾向にあり,11月下旬になると下流域や下流域の支流で繁殖する傾向にあった。これらの結果は支流遡上群ごとに河川への進入時期が異なり,上流域で産卵する遡上群ほど,早く河川へ進入していることを示唆している。また,調査を通して北上川の本流区間や一部の支流で自然産卵場がみつかり,北上川水系には多くの自然産卵場がある可能性がわかった。 前年度までに得られた,閉鎖型循環水槽を用いた本種の酸素消費量計測の結果については,今年度,国際誌に掲載された。 北上川および甲子川から採取したサケの水温馴致(8℃,12℃,16℃)を実施し,心筋アドレナリン受容体量を放射性リガンドアッセイにより調べた。Bmaxは両河川とも12℃が最も高かった。北上川のサケは16℃で低くなる傾向がみられ,甲子川のサケは8℃および16℃では著しく低い値を示した。Kdは両河川の全ての試験区において0.076nM程度であった。北上川と甲子川のサケは遺伝的に異なると考えられているが,本研究の結果より,サケ心筋アドレナリン受容体の数と機能は個体の遺伝的背景や水温に依存しない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これでに得られている結果を集計し,一定の成果が得られたこと,これまでの成果を国際誌に投稿し,公表されたこと。生理学的実験については,回帰数が低迷している中,昨年に引き続きサンプルを確保でき,分析結果を得られたことから,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けデータの取りまとめを中心に行うと同時に,国際学会での発表と論文公表を引き続き行っていきたい。シンポジウムなども積極的に行い,北上川流域,三陸沿岸に居住する方々へのアウトリーチ活動なども展開していきたい。
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Research Products
(4 results)