2016 Fiscal Year Annual Research Report
代理親魚技法を利用した新規交雑種作出技術の開発~優良交雑種を自然交配で生産する~
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16H04969
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
矢澤 良輔 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70625863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70281003)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 交雑種 / 代理親魚技法 / サバ / 育種 / 雑種強勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、代理親魚技法を用いて繁殖行動を行わない異種の配偶子を生産する代理親を作出し、通常の親魚との自然交配により交雑種を自動的に繰り返し生産する技術の開発を試みる。この代理親魚技法とは、ドナー種の生殖細胞を宿主種の仔魚へ移植し、ドナー生殖細胞を宿主生殖腺内で、卵あるいは精子へと分化させる技術である。具体的には、三倍体化処理を施したA種の不妊宿主(オス)にドナーとなるB種の生殖細胞を移植し、成熟した三倍体化A種宿主(オス)にドナー由来のB種の精子のみを生産させる。次に通常のA種親魚(メス)と宿主A種親魚(オス)を同一水槽内で飼育すれば、同種間での自然交配を行うことが期待される。つまり、この方法では人間の労力を全く要せず、通常の海産魚の自然産卵による受精卵採取と全く同じ方法で、交雑種の受精卵を安定的に繰り返し生産することが可能になる。本研究では、特にゴマサバ(Scomber australasicus)とマサバ(S. japonicus)の交雑種(ゴママサバ)の生産に応用する。 平成28年度は、上記の課題を遂行するために、(1)ドナーとなるサバ精巣の最適な発達段階を明らかにし、(2)このドナー精巣を凍結保存する技術を確立した。さらに、(3)安定的な不妊三倍体宿主の作出技術を確立したうえで、(4)実際に不妊三倍体宿主にドナー精巣細胞の移植を行った。具体的には、マサバ三倍体にゴマサバ精巣移植したロットとゴマサバ三倍体にマサバ精巣を移植したロットを平成28年4月~5月にかけて作出した。 これらの移植魚は現在飼育中であり、今後移植魚の成熟を待ち、ドナー由来配偶子の生産されるかを確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の最大の目標は不妊三倍体宿主へドナー精巣細胞を移植した移植魚を安定的に作出することであった。これまで宿主の生産可能な時期(3月~6月)には、ドナー魚が成熟しており、最適な発達段階の未熟なドナー精巣を得ることが困難であったが、凍結保存する技術を確立したことにより、ドナーの供給に関しての自由度が増した。宿主については、これまでに、三倍体化個体が二倍体個体と比較して、生残率が低いことが明らかとなっており、三倍体化率が100%であることが本技術の確立に重要であることが示唆されていた。本課題において、安定的に三倍体化率100%となる条件を見出したものの、移植後の生残率が10%以下と低い状況にある。現在は移植魚を大量に作ることで、この低い生残率をカバーしているが、今後は飼育技術の改善も含め、より安定的に移植魚を作出し、成魚まで飼育することを目指す。上記の課題は残しているものの、これまでにマサバ三倍体にゴマサバ精巣移植したロットおよびゴマサバ三倍体にマサバ精巣を移植したロットの作出に成功している。本課題において、マサバおよびゴマサバを1トン程度の小型水槽内で飼育しても、1歳までに雌雄ともに成熟し、さらに水槽内で産卵することを可能にしている。つまり、これらの移植魚は平成29年に成熟予定であり、平成29年度中に、移植魚がドナー由来の配偶子を生産しているか否かを確認可能である状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、第一に平成28年度に作出した三倍体サバ移植魚がドナー由来の機能的な配偶子を生産可能か否かを確認する。ドナー由来の配偶子生産の確認については、これまでに確立されているゲノムDNA上の配列を標的とした種判別PCR法を用いる。さらに、ドナー由来の配偶子が生産されていることが確認されれば、次にこれらの配偶子が機能的か否かを受精試験により確認する。 第二に、これまで多数の移植魚を作出しても、成魚まで生き残る個体が少ないことが大きな課題であることから、より効率よく大量に移植魚を作出する。そのためには、良質の卵を生産する親魚の養成および人為催熟技術、三倍体化処理後の飼育技術の各ステップで改善が必要である。そこで、親魚の飼育に関しては、より厳密に日長や水温を制御し、安定的に成熟させる技術を確立すること、種苗生産技術としては水槽サイズや水槽内水流等について検討し、本技術に最適な飼育技術を構築する。 また、今後は移植魚と天然魚の自然交配を目指すことから、移植魚の性統御技術が必要となることが予測される。これまでの他魚種の代理親魚技法の報告において、オス宿主からの精子生産に比べ、メス宿主からの卵生産が困難であることが知られている。そのため、移植魚を全オス化し、天然メス親魚と自然交配させることで雑種を作出することが、本技術に適していると考えられる。そのため、アロマターゼインヒビター(AI)の経口投与によるオス化技術を確立する。これまでにマサバおよびゴマサバへのAI投与によりオス化が可能となっているが、AI投与個体が機能的な精子を生産するか否かについては確認していないので、最適な投与期間、投与量等を検討し、この技術を確立す。 上記の各技術を組み合わせ、代理親魚技と通常の親魚との自然交配により交雑種を自動的に繰り返し生産する技術の開発を試みる。
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Research Products
(3 results)