2016 Fiscal Year Annual Research Report
外洋性大型魚類の水温適応を解明する新手法の提案と実践
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16H04973
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行動生態 / 魚類 / 水温 / バイオロギング |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年7月にガラパゴス諸島の周辺海域において、アカシュモクザメの生態を調べる野外調査を実施した。延縄でサメを釣り上げ、背びれに記録計のパッケージを取り付けて放流した。計4匹のサメを放流したが、1匹は翌日に再び針にかかって死亡しているのが確認された。残りの3匹のうち、1匹はあまりにも遠くまで泳ぎすぎてしまい、記録計を回収することができなかった。しかし2匹からは記録計が無事に回収され、貴重なデータを得ることができた。 2016年9月にカナダ北極域のバフィン島の東岸、クライドリバーと呼ばれる集落の周辺海域にてニシオンデンザメの調査を実施した。アカシュモクザメと同様に、延縄でサメを釣り上げ、記録計を取り付けて放流した。計6匹のサメを放流し、そのうちの5匹から記録計を回収することができた。残りの1匹からは電波信号が入らず、捜索不能になってしまった。回収した5台の記録計のうち、1台は浸水のためデータが取得できなかったが、残りの4台は正常に機能しており、有用なデータが手に入った。 また2016年の8月から10月にかけて、伊豆半島の南端、神子元島を複数回訪問し、アカシュモクザメの調査を実施した。現地のダイビングショップの協力を得て、スキューバで潜り、2015年の8月に海底に設置した6台の超音波受信機をすべて回収することできた。受信機からデータをダウンロードしたところ、1年間にわたるシュモクザメの行動パターンが正常に記録されていることが確認できた。 以上のように、熱帯から極域までをカバーする複数の海域からサメの行動データを取得することができた。サメがそれぞれの海域において、どのような水温帯を好み、また鉛直方向の移動にともなう経験水温の変化によってどのような影響を受けているのか、現在解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な部分に関しては、当初の予定通りに進展しており、さまざまな水温帯に生息するサメから詳細な行動データが得られている。予想外であったのは、本研究から派生したいくつかの論文が、Nature Communications誌やEcology Letters誌といった非常にインパクトの高い国際学術誌に掲載されたことである。そのため(1)「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を遂行していく。さまざまなサメから詳細な行動データを取得し、それぞれの種がどのような水温帯を好み、また鉛直方向の移動にともなう経験水温の変化によってどのような影響を受けているのか、明らかにしていく。また論文の執筆をすすめ、国際学術誌に投稿する。
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Research Products
(14 results)