2017 Fiscal Year Annual Research Report
外洋性大型魚類の水温適応を解明する新手法の提案と実践
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16H04973
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行動生態 / 温度適応 / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年9月にバフィン島(カナダ)の東岸に位置するクライドリバーの周辺海域において、ニシオンデンザメの調査を実施した。諸事情により研究代表者は調査に参加することができなかったが、記録計、切り離し装置、電波発信器等の調査機材一式をカナダ側の共同研究者(Hussey博士)に送り、テレビ電話で使用法を説明することにより、無事に対応することができた。調査は順調に進み、5匹のニシオンデンザメを延縄で捕獲し、記録計のパッケージを取り付けて放流した。そしてすべての記録計を回収し、データを取得することができた。 2017年11月にはオーストラリアのケアンズでオオメジロザメの調査を実施した。ニシオンデンザメと同様、サメを釣り上げて記録計のパッケージを取り付けて放流した。1匹のオオメジロザメからデータを取得することができた。 ホホジロザメのデータの解析を進めた。遊泳スピードと経験水温に基づき、サメの遊泳中のエネルギー消費量を見積もったところ、ホホジロザメは一日で6.6~15.5 MJものエネルギーを消費していることが示唆された。この値は同じサイズの哺乳類に比べると少ないものの、魚類としては例外的に多く、高い体温を保っているホホジロザメが多くのエネルギーを消費していることが定量的に示された。この結果は論文にまとめて英国王立協会紀要に投稿済みであり、現在、査読結果を待っている。 ニシオンデンザメのデータの解析を進めた。放流後のサメの深度、遊泳スピード、尾びれの振りの頻度の変化から、正常な行動に戻るまでに要した時間を推定すると、平均して13時間であった。この値は、今までに報告された他のサメ類の値よりも短く、ニシオンデンザメは低い体温に起因する低い代謝量のために捕獲のストレスを受けにくいことが示唆された。この結果は現在論文にまとめており、今年度中には国際学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、さまざまな水温帯に生息するサメ類から詳細な行動データが得られ、その解析も進んでいる。またこれまでに関連の論文を複数、国際学術誌に発表することができた。そのため(2)「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を遂行していく。さまざまなサメ類から詳細な行動データを取得し、それぞれの種がどのような水温帯を好み、また鉛直方向の移動にともなう経験水温の変化によってどのような影響を受けているのかを明らかにする。同時に今までに得られたデータの解析を進め、論文を執筆し、ひとつひとつ国際学術誌に投稿していく。
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Research Products
(11 results)