2017 Fiscal Year Annual Research Report
主要二枚貝の性・性成熟・産卵を制御する脳ホルモンの役割と人工種苗生産への応用
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16H04978
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾定 誠 東北大学, 農学研究科, 教授 (30177208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二枚貝 / GnRH / ステロイドホルモン / 生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ホタテガイのステロイドホルモン生合成経路が以下のように推定された。生合成経路に沿って順に、starの2種類のアイソフォームstar3とstar9、cyp17a1、3β脱水素酵素hsd3bの2種のアイソフォームhsd3b1、hsd3b2、17β脱水素酵素hsd17bの4種のアイソフォームhsd17b8、hsd17b10、hsd17b11、hsd17b14、5α還元酵素srd5a1が同定され、それに加えstarとcyp17aの間にcyp10が、アンドロゲンからエストロゲンへの変換にcyp3aが働くことが示唆された。star3とcyp17a1の性成熟初期の高発現によるステロイドホルモンの活発な合成の準備、3β脱水素酵素hsd3bと17β脱水素酵素hsd17bの成熟期にかけての高発現による活発なエストロゲン合成が示唆された。 2)ホタテガイGnRH(pyGnRH)受容体遺伝子のHEK細胞への導入と発現に成功し、pyGnRH11aa C末端Pro-NH2)に対する応答が確認された。受容体を介したpyGnRH11aa(C末端Pro-NH2)に対する応答は、細胞内Ca2+の上昇として確認され、cAMPを介していないことが明らかになった。一方、pyGnRH12aa(C末端Gly-OH)に対する応答は、細胞内Ca2+とcAMPのいずれでも検出されず、受容体上での両ペプチドの振る舞いと相互の関係を明らかにする必要がある。 3)卵成熟休止因子(OMAF)の全長に対する組換えタンパクのin vitro合成を、これまで大腸菌や酵母を用いたベクター・宿主系で試み、少量の組換えOMAFしかできず、交代作製には至らなかった。pCOLDベクターを用いた大腸菌タンパク発現系を用いることで、全長OMAFに対する抗血清を得ることに成功した。抗血清の特異性が組換え大腸菌全タンパクとホタテガイ組織抽出液で確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステロイドホルモン生合成経路の全体像を明らかにすることができたことは、これまでの断片的な情報しかなかった二枚貝を含む軟体動物のステロイド研究の大きな進歩である。HEK細胞によるpyGnRH受容体タンパクの発現と、リガンドとしてのpyGnRH11aa C末端Pro-NH2)への応答を検出できたことは、今後の種々のGnRHペプチドに対する応答性の評価に大きく貢献できる。卵成熟休止因子(OMAF)の全長に対する特異抗体を得られたことは、生体内のOMAFノックダウンによるセロトニンの産卵誘発作用の増強を大いに期待できる。一方、実験の主要な実験生物であるホタテガイが、最近種苗の質の劣化が著しく、雌雄判別後の産卵後の未分化期に至るまでの死亡率が80%ほどと異常に高く、pyGnRH投与による性文化への影響の評価に至らなかった。実験ホタテガイを聞き取りの上で十分に吟味して、再実験を行う。同時に、卵巣・精巣組織培養によるpyGnRH添加実験を併用し、性分化と性的発達の評価を行うことによって、結果の補償を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
ステロイドホルモン生合成関連酵素候補遺伝子発現量の生殖巣組織培養によるpyGnRHのこれら遺伝子発現への影響を検討し、ステロイド生合成の制御機構を明らかにする。また、雌雄判別されている未分化期のホタテガイへの2種類のpyGnRH投与による性表現型への影響をin vivo注射実験に加え、卵巣および精巣組織培養によるin vitro添加培養実験を用いて検討し、雌雄への性転換の可能性を検証する。HEK細胞にpyGnRH受容体に加えpyAKH受容体遺伝子を導入し、GnRHペプチド群およびAKHに対する応答から、受容体の特性とユニバーサルなGnRHペプチド配列の設計に資する。ホタテガイOMAF抗体による産卵抑制解除を種々の二枚貝で試み、セロトニンによって誘発される人工産卵に対する増強効果を検証する。
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Research Products
(15 results)