2018 Fiscal Year Annual Research Report
主要二枚貝の性・性成熟・産卵を制御する脳ホルモンの役割と人工種苗生産への応用
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16H04978
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾定 誠 東北大学, 農学研究科, 教授 (30177208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二枚貝 / GnRH / 性分化 / 配偶子形成 / 産卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)性的未分化ホタテガイへのpyGnRH11aaとpyGnRH12aa投与による性分化への影響 問題であった北海道産の種苗の中から生残が期待できるホタテガイを厳選したが、GnRHペプチド投与の有無に関わらず、高い死亡率のために解析に至らなかった。並行して進めていたペプチドホルモンの投与方法の検討の結果、新たな低侵襲性の投与法を開発することができた。貝殻と外套膜の間隙(外套外腔)へのGnRHペプチドーカカオバターエマルジョン投与が、低侵襲性で90%もの極めて高い生残率を示し、ペプチドホルモンの除法的な体内吸収をも実現できる方法であることが明らかになった。この手法を用いて、青森県水産総合研究所の協力を得て、同様の投与実験を再度試みているところである。 2)卵巣と精巣の組織へのpyGnRH11aaとpyGnRH12aa添加培養による性分化への影響 成長期の卵母細胞の成長は、pyGnRH12aa添加で促進され、pyGnRH11aaがその機能を抑制している傾向があった。特に、未分化期の卵巣で顕著に雌特異的遺伝子foxl2の発現量がpyGnRH12aaによって強く促され、pyGnRH11aaによって低く抑えられた。一方、卵巣でもわずかに発現している雄特異的遺伝子dmrtは、pyGnRH11aaによって発現量が高くなった。これらの結果は、これまで報告してきた雌におけるpyGnRH11aaによる卵形成の阻害と雄性化への性転換に加えて、新たに、これまで未知だったpyGnRH12aaが卵形成の促進と雌性化の性分化を促している可能性が示唆された。 3)全長OMAFに対する抗体を用いたOMAF阻害による5-HT(セロトニン)産卵誘発の増強効果の検討 ホタテガイOMAF全配列に対する抗体による前処理は、アカザラガイ、アサリのセロトニンによる放精数を上昇させるとともに、各種二枚貝精子運動能を活性化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物材料の問題によって、生体への投与実験がうまくいかない状況であったが、新しいGnRHペプチド投与法の開発に成功し、青森県水産総合研究所の協力のもとで、高品質のホタテガイ種苗を用いた高生残率の垂下飼育実験を進めることができた。貴重な生体試料を得ることができ、その解析を待つばかりである現状は評価できる。 また、並行して進めた卵巣組織培養実験で、これまでの生体へのpyGnRH11aaの投与によって得られた結果を強く支持する性特異的遺伝子の発現動態に加え、雌性の性分化や発達に機能するもう一方のGnRHペプチドであるpyGnRH12aaの実態を明らかにできた。このことは、我々がか推測していた脳ペプチドホルモンによる性分化制御機構の存在をより強く示唆することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2種類のpyGnRHを添加培養した未分化期と配偶子形成途上の成長期の生殖巣組織における雌雄性とその発達を、性特異的遺伝子Foxl2及びDMRTと雌雄の発達に伴って発現が特異的に増加したステロイド生合成酵素遺伝子hsd3b及びhsd17bに着目して解析する。2種類のpyGnRHを競合させる組み合わせも行い、それらの雌雄の性分化に関わる相互関係と軟体動物におけるステロイドホルモン生合成のGnRHペプチド神経による直接制御の可能性を明らかにする。 全配列に対する組換えタンパク、翻訳領域内に見出した複数の推定される機能領域としてSOD(Superoxide dismutase)とセロトニンによる機能に対する抑制領域に相当する組換えタンパクを用いた機能解析を試みる。これによって、産卵抑制におけるOMAFの作用機構を明らかにする。
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Research Products
(17 results)