2016 Fiscal Year Annual Research Report
農業用ため池の地震時のすべり破壊と液状化による変形の統合的耐震診断技術の開発
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16H04994
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
毛利 栄征 茨城大学, 農学部, 教授 (90373224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河端 俊典 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20335425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ため池 / 耐震 / 安全性評価 / 土の強度・変形 / 土の劣化と強度低下 / 土の強度試験 / すべり破壊 / 超大ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
農林水産省の点検調査では,全国のため池の内,約14万箇所で老朽化が進み,8,978箇所でレベル1地震による損壊の危険性が高いことが明らかとなった.この調査ではレベル2地震に対しては調査されておらず,その対策に着手できないのが現状である. ため池堤体の大規模地震に対する安全性を照査するためには,すべり破壊に進展する超大ひずみレベル(大変形)での土の強度と変形特性の詳細な強度試験が不可欠である.このため,H28年度は全国のため池堤体土の強度試験結果を収集分析し,土質分類,粒度などの諸元と強度特性(内部摩擦角φ,粘着力c,N値)からため池堤体土の類型化を実施した.その分類ごとの標準強度とN値の関係を整理して,標準強度予測式を構築するとともに,代表試料の微小ひずみレベルから中ひずみレベルまでの試験を実施して,土質の種類とその力学的特性の関係を明らかにした. 1.ため池堤体土の類型化について:(1)全国のため池を構成している土の試験結果を収集し,データベース化した.(2)収集した土質試験結果をため池堤体土の物理的特性によって類型化した.(3)その分類ごとに,土の標準強度(内部摩擦角φ,粘着力c)を予測する式を提案した. 2.微小ひずみから中ひずみ領域での強度特性の解明について: (1)せん断破壊を再現するための試験装置を作成した.(2)類型化した堤体土(代表試料)を対象として,土が発揮できる強度と変形性能の特性を試験によって明らかにした.(3)土の強度(内部摩擦角φ,粘着力c,変形性能)と土質分類の関係を整理し,土質特性の影響,密度の影響などの分析に着手した.この分析結果をもとに,強度低下の顕著な土質区分とN値の関係などを明らかにして,最適土質分類を確定する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画に対して以下のように進捗している. 1.ため池堤体土の類型化について:(1)全国のため池の中から,耐震診断を目的に詳細な土質試験(内部摩擦角φ,粘着力c,物理試験)と地盤調査(N値)を実施しているため池を調査分析し,その堤体の代表地層や基礎地盤の土質試験結果1,200箇所をデータベース化した.(2)収集した土質試験結果をもとに,ため池堤体土の粒度,細粒分含有率(Fc),密度,含水比(w)などの物理的特性によって類型化し,分類ごとの強度(内部摩擦角φ,粘着力c)の統計解析を実施して,N値との相関を明らかにした. (3)その結果,ため池堤体土の標準強度(内部摩擦角φ,粘着力c)を地盤調査で得られるN値から予測する式を提案した. 2.微小ひずみから中ひずみ領域での強度特性の解明について:ため池堤体に使用されている土の代表試料を選定し,そのすべり破壊が発生する起点である変形の初期段階で土が発揮できる強度(最大せん断強度)と変形性能の特性を試験によって明らかにした. (1)せん断破壊を再現するための試験装置の改造:土のすべり破壊を再現できる試験機を作成した.(2)類型化した堤体土(代表試料)を対象として,(4)で作製した繰返し損傷試験機を用いて土のひずみ量が5%以下の微小ひずみから10%程度の中ひずみまでの試験を連続して実施し,土が発揮できる最大せん断強度,残留せん断強度と変形性能の特性を試験によって明らかにした.(3)このせん断試験の結果から類型化した土質分類毎の最大せん断強度,残留せん断強度の関係,強度低下率や変形特性を整理し,土質特性の影響,粒度,細粒分含有率(Fc),含水比,密度の影響などの分析に着手した.この分析結果をもとに,強度低下の顕著な土質区分とN値の関係などを明らかにして,最適土質分類を確定する.
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Strategy for Future Research Activity |
土の締固めの効果と強度低下の関係解明を目標として、平成28年度に実施した試験をすべり発生後の超大ひずみレベルまで拡張して試験を実施する. (1)作製した繰返し損傷試験機は,せん断の開始直後の変形初期段階で機械的な摩擦が大きく試験結果に影響を及ぼしていることが判明したため,摩擦抵抗力の小さい材質のせん断容器に変更するなどの修正を行った上で,前年度のデータの再検証を行う.(2)平成28年度の成果による土質分類を追加試験と分析を継続し最終的な最適土質分類を確定する.(3)その土質分類ごとの代表土質試料に特化して中ひずみ10%から超大ひずみレベルまでのせん断試験と繰返し損傷試験を連続して実施して,すべり発生後の土が発揮できる強度と変形性能の特性を明らかにする.この試験結果から土のすべり破壊時に発生する強度低下モデル(超大ひずみ領域での強度低下モデル)を構築する.(4)試験結果から最も特徴的な強度低下現象となる液状化の発生の条件を確認し,土の沈下量,変形性能の低下,液状化後に発揮できる強度(残留強度)などを抽出して,土の粒度,細粒分含有率(Fc),密度などの土質諸元から液状化発生条件を特定して,ため池堤体土の地震時の強度低下モデルに組み込むための要因を確定する.(5)(4)の強度低下モデルの主要因の影響度を一つずつ試験によって解明する.第1には,堤体土の締固め密度を3~4段階に設定した試料で繰返し損傷試験を実施し,密度が強度低下や変形性能に与える影響を土質分類ごとに解明する.(6)その締固め効果を「強度低下モデル」に導入し,汎用的な「標準強度低下モデル」を構築する.(7)すべり破壊の起点である中ひずみレベルからすべり破壊が発生している超大ひずみレベルにいたる堤体土の強度低下特性と液状化発生による特性変化までを包含する「一般化標準強度低下モデル」のプロトタイプを提案する.
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