2016 Fiscal Year Annual Research Report
Hydrological study on performance evaluation and efficiency improvement of spate irrigation in arid regions of Africa
Project/Area Number |
16H04996
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中丸 治哉 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80171809)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 明夫 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00263400)
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 農業工学 / 洪水灌漑 / スーダン / ガッシュデルタ / リモートセンシング / 蒸発散量 / DEM |
Outline of Annual Research Achievements |
洪水灌漑(spate irrigation)は,季節河川における雨季の洪水を堰と水路によって圃場に導水する技術である.本研究は,スーダン東部カッサラ州に位置するガッシュデルタを対象として,洪水灌漑の運用実態,圃場内での灌漑水の供給状況を現地調査とデータ解析によって明らかにした後,灌漑効率を改善する方策を検討するものである. 初年度の平成28年度は,まず衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法をガッシュデルタに適用して推定された蒸発散量の空間変動の大きさと,DEMによって把握された圃場面の凹凸の大きさの相関関係を検討した.その結果,同じ灌漑ブロックに含まれる10程度の圃場について相関を調べると,どのブロックにおいても,圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさには,明確な正の相関が認められ,このことは,圃場面が均平でない場合,灌漑水の供給量に空間的な多寡が生じやすいものと解釈された.この研究成果は,国際会議論文と農業農村工学会誌において発表された.また,衛星画像に基づいて,耕作圃場と休耕圃場を分類するとともに,耕作圃場内で水が供給されて作物(ソルガム)が栽培された箇所を特定する方法を開発し,同法によって推定された栽培面積は,現地踏査に基づいて求められた実績値と概ね合致していることが示された. 一方,平成28年12月にスーダンへ渡航し,ガッシュデルタの現地調査を実施した.スーダン農業研究機構(ARC)の協力を得て,ガッシュ川の取水堰,幹線用水路,圃場への灌漑水の取入口,圃場内の状況をそれぞれ視察した.GPSによる標高測定を行いながらの踏査によれば,DEM(空間分解能30m)による圃場面の凹凸の大きさに比べれば,視察した圃場の表面は均平に近いと思われること,また,圃場と圃場の間を区切るための小堤防だけでなく,導水を目的とした圃場内の小堤防も存在することなどが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガッシュデルタにおける蒸発散量の空間分布の把握,また,蒸発散量の空間変動の大きさと圃場面の凹凸の大きさとの関係把握については,この科学研究費補助金の助成を受ける前から着手していた課題である.しかしながら,いずれも衛星リモートセンシングに基づく机上の議論のみにとどまっており,現地調査を実施し,データ解析による結果と現地調査での結果を対比することは,本科学研究費を申請した最大の目的と言ってよい.本研究の初年度に当たる平成28年度は,既往の研究成果に基づいて,灌漑水の供給量の空間的な不均一性など,ガッシュデルタの洪水灌漑における問題の所在をデータ解析によって明確化するとともに,1回目の現地調査を実施し,ガッシュ川の取水堰,幹線用水路,圃場への灌漑水の取入口,圃場内の状況をそれぞれ視察した.このため,初年度の進捗状況としては,概ね順調と判断している. なお,DEM(ASTER Global DEM,空間分解能30m)によって推定された圃場面の凹凸の大きさに比べれば,視察した圃場の表面は均平に近いと思われた.さらに,文献調査から空間分解能30mのDEMによる地表面形状には誤差が含まれやすいことを把握した.この結果から,圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさの相関解析については,より空間分解能の高いDEMを用いた見直しの必要があると考えているが,これについては次年度の検討課題とする.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,現地調査は実施せず,海外研究協力者のBashir Mohammed Ahmed AdamとKhalid Ali Eltaib Elamin(スーダン農業研究機構)を招聘し,神戸大学においてデータ解析を実施する.具体的な研究の推進方策は以下の通りである. ① エネルギー収支法(SEBAL)に基づく蒸発散量の空間分布の推定: 既往研究においては,衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法であるSEBALをガッシュデルタ洪水灌漑地区に適用してきた.平成29年度の招聘期間中に,SEBALを最新版の衛星画像処理ソフト(ERDAS IMAGINE)に移植し,近年の衛星画像に基づいて蒸発散量と土壌水分量の空間分布を推定する.Bashirは,この科学研究費補助金で約1ヶ月招聘し,Khalidについては,別途申請していた平成29年度帰国外国人留学生短期研究制度(日本学生支援機構)の助成金で3ヶ月招聘する. ② 圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさの相関解析: これまでの解析では,空間分解能30mのDEMが利用されてきたが,このDEMによる地表面形状には誤差が含まれるとの指摘があるため,空間分解能10mのDEMを購入して,圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさの相関解析を再度実施する.蒸発散量の空間変動の大きさについては,①の結果を利用する. ③ ガッシュデルタへの水供給シミュレーション: 初年度において,107年間のガッシュ川年流量データに基づき,年流量の頻度分布がワイブル分布に従うこと,年流量データは白色雑音に近いことを把握し,年流量データの模擬発生モデルを作成している.このモデルを利用したモンテカルロシミュレーションによって,圃場の耕作・休耕ローテーションの設定が圃場への水供給の信頼性(水供給が水需要を満たす確率)に及ぼす影響を明らかにする.
|
Research Products
(4 results)
-
-
[Journal Article] Performance evaluation of spate irrigation using remote sensing and DEM2016
Author(s)
Khalid, A.E., Tanakamaru, H., Tada, A., Torii, K., Bashir, M.A. and Ghebreamlak, A.Z.
-
Journal Title
Proceedings of the 7th International Conference on Water Resources and Environment Research (ICWRER2016)
Volume: -
Pages: g02-08-1~6
Int'l Joint Research
-
-