2017 Fiscal Year Annual Research Report
Hydrological study on performance evaluation and efficiency improvement of spate irrigation in arid regions of Africa
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16H04996
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中丸 治哉 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80171809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 明夫 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00263400)
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業工学 / 洪水灌漑 / スーダン / ガッシュデルタ / リモートセンシング / 蒸発散量 / DEM / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,ガッシュデルタ洪水灌漑地区を対象として,主に耕作・休耕ローテーションの実態把握と最適灌漑面積の設定に関する検討を行った.地区の全農地面積は約10万haで,毎年,全体の1/3(3万3千ha)で耕作し,残り2/3を休耕とする3年ローテーションが適用されてきた.近年,全体の1/2(5万ha)で耕作を行う2年ローテーションの導入を目的とした水利施設の改修が行われたが,必要灌漑水量が多いことから非現実的との見方もある.そこで,まず水源であるガッシュ川の長期年流量データを模擬発生させるモンテカルロシミュレーションを実施し,水供給が水需要を満たす頻度を表す信頼度と,水不足が生じた場合の不足分の大きさを表す脆弱度を評価したところ,2年ローテーションでは信頼度が低く,脆弱度が高いことから,その実施は困難という結果を得た.次いで,ガッシュ川の年流量から圃場へ到達する水量を求めた後,圃場内の水供給の不均一性を考慮した上で作物収量と純利益を計算するシミュレーションモデルを作成し,模擬発生させた長期流況データに基づいて最適灌漑面積を求めたところ,標準的な取水率と灌漑効率の条件下では4万4千haが最適値となった. 一方,最近4年間に取得された衛星画像データに基づいてガッシュデルタの土地利用を判別する決定木分類を実施し,耕作面積が約3万haから8万haの範囲で年ごとに変動すること,3年ローテーションが主体の灌漑ブロックと2年ローテーションが主体の灌漑ブロックの両者が存在することを示した.また,衛星画像データから得た地表面気温とNDVIに基づいて耕作域を簡便に判別するアルゴリズムを提案した.さらに,衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法であるSEBALで土壌水分分布を推定した後,それを参照値として,衛星画像データから土壌水分の多い領域をより簡便に抽出する方法を提示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,平成28年12月に実施したガッシュデルタにおける現地調査と資料収集の結果を踏まえて,耕作・休耕ローテーションの実態把握と最適灌漑面積の設定に関する検討を行い,ガッシュデルタの洪水灌漑によって生産されるソルガム収量,純利益を最大化する方策が提示され,この課題について大変有用な成果が得られた.この課題に関しては,査読付き英文論文4編と和文論文1編を発表した.このため,研究の進捗状況は順調と判断している. 一方,平成28年度,研究代表者(田中丸),研究分担者(多田),海外研究協力者らは,これまでのガッシュデルタに関する研究成果を整理し,蒸発散量の空間変動の大きさと圃場面の凹凸の大きさとの関係について論文を発表した.しかしながら,これまで圃場面の凹凸の評価に用いてきたDEM(ASTER GDEM,空間分解能30m)はその信頼性が十分とは言えず,より空間分解能の高いDEMを用いた見直しの必要があった.この課題については,高分解能DEMデータを取得する領域を特定する作業に時間を要した.平成29年度後半にAW3Dの標準DEM(空間分解能5m)を入手し,1つの灌漑区画において地表起伏指標を求め,地形起伏と蒸発散量の多寡の関係,ASTER GDEMとAW3Dによる地表起伏指標の差異について検討したが,検討対象の灌漑区画をさらに増やす必要がある.この研究課題は,平成30年度の中心課題とする予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,現地調査は実施せず,衛星画像データ及びDEMデータの解析を進めるとともに,神戸大学でワークショップの開催を予定している.研究の推進方策は以下の通りである. ① エネルギー収支法(SEBAL)に基づく蒸発散量の空間分布の推定: これまでの研究では,主に海外研究協力者(Bashir,Khalid)が中心となって衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法であるSEBALをガッシュデルタに適用してきた.平成30年度は,後述するワークショップのためにこれら海外研究協力者を招聘することから,ワークショップ前に研究実施期間を設定し,最近の衛星画像データを用いてSEBALで蒸発散量の空間分布を推定する. ② 圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさの相関解析: これまでの解析では,空間分解能30mのASTER GDEMが利用されてきたが,このDEMによる地表面形状には誤差が含まれるとの指摘があるため,AW3Dの標準DEM(空間分解能5m)に基づいて,圃場面の凹凸の大きさと蒸発散量の空間変動の大きさの相関解析を実施する.平成30年度は多数の灌漑区画でこの解析を行い,圃場面の凹凸の大きさが蒸発散量の空間変動の大きさに及ぼす影響について一般性のある結論を得る. ③ 神戸大学におけるワークショップの実施: 本研究の中間的なとりまとめとして,平成30年度に神戸大学においてワークショップを実施する.このワークショップには,Bashir,Khalid(スーダン農業研究機構)とGhebreamlak(エリトリア)を招聘するとともに,本研究のスーダン側カウンターパートであるスーダン農業研究機構の所長を招聘する.その際,平成31年度(最終年度)にスーダン農業研究機構で開催予定のワークショップについても協議する予定である.
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Research Products
(9 results)