2018 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05001
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小出 章二 岩手大学, 農学部, 教授 (70292175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農産物 / 農産食品 / 長期保存 / 理化学的特性 / LCA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、生鮮青果物の高品質長期保存を行うにあたり必要不可欠となる腐敗菌制御に関する新しい保存法(バイオプレザベーション)について検討を行った。具体的には、収穫後のカットしたニンジンを乳酸菌(Lactobacillus casei)溶液に浸漬したのちに密封保存を5日間行い、その理化学的特性(目減り、色彩色度、硬度・β-カロテン・pHなど)および微生物数(大腸菌群数・乳酸菌数)の継時変化を測定した。その結果、理化学的特性は対照区と比較して有意な差は見られなかった。菌数の変化をみると、大腸菌群数は乳酸菌溶液に浸漬後減少したが、保存日数とともに増加し、これに対して乳酸菌数は浸漬後大きく増加し保存後一旦減少したのち再び増加する傾向を呈した。また初発の乳酸菌数と大腸菌群数を原点座標とする二次元グラフを作成したところ、保存中における乳酸菌数と大腸菌群数との関係に規則性があることが示された。 更に本研究では、LCA手法による農産食品の環境負荷の解析の一例として、乾燥キャベツの遠赤外線乾燥過程を対象とし、ブランチング処理が環境負荷低減に及ぼす影響について検討するとともに、乾燥後製品の栄養成分から環境効率を算出し、品質と環境負荷の関係について考察した。その結果、資源消費および水資源消費を除く全ての影響項目で、加工工程における環境負荷の寄与度が高い結果となった。乾燥キャベツの製造時における環境負荷を低減するための手段として、ブランチング処理は極めて有効であることが明らかとなり、かつ栄養成分を考慮した上でも良好な処理方法であることが示された。 今年度は、これまで得られた知見をもとに、高品質長期保存を可能とする保存条件を水分活性、温度、LCAの観点から整理し、実用化につながる保存方法を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は最終的に、①穀物・農産食品の高品質長期保存に必要な水分活性とガラス転移温度を測定し最適保存条件を提案すること、②農産食品の長期保存における品質・水分や理化学的特性の計測・評価、③ライフサイクルアセスメント手法を用いた環境負荷やコスト評価を行うことを目標としている。 現時点で、①と②に関しては、品質に関するデータが若干少ないものの、水分活性やガラス転移温度の観点から穀物・農産食品の高品質長期保存に関する俯瞰的かつ可視的な説明や提案が可能となったこと、③については十分な成果が得られた点をかんがみ、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究室で継代培養している乳酸菌Lactobacillus caseiを果実に固定化させ、フリーズドライした後、種々の湿度条件で保存し、その水分吸着等温線(水分活性と水分との関係)をモデル化するとともに、フリーズドライ乳酸菌固定化果実(以後、FDL果実)の乳酸菌生存率や、品質および理化学的特性(アスコルビン酸含有率、色彩色度、硬度など)の経時変化を計測・評価する。これより得られた結果から、水分活性(湿度)および保存時間がフリーズドライ果実の乳酸菌生存率および品質・理化学的特性に与える影響を予測モデルを用いて検討する。更にL. caseiのガラス転移温度を計測することで、FDL果実の乳酸菌生存率を保持しうる保存条件を検討する。これらの結果から、FDL果実の高品質長期保存の実現可能性について検討する。 また、これまで本研究で得られた穀物、農産食品(粉体)、フリーズドライ果実の保存結果をベースに、農産物・農産食品の高品質長期保存条件について俯瞰的かつ可視的に説明できるグラフの作成を検討する。 加えて、今年度は穀物・農産食品の乾燥・保存条件における環境負荷についてLCA手法により解析し、そのホットスポットを明確化する。またプロセスの改善ポイントを明らかにし、環境面から見た最適乾燥・保存条件について検討を行う。
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Research Products
(4 results)