2017 Fiscal Year Annual Research Report
Quality evaluation of food and agricultural products using water molecule network
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16H05010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 雄一 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20373285)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / 水素結合 / 水 / 菌 / デンプン / 農産物 / センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
食品分野での水分活性は細菌などが利用する水を自由水として理解する場面が多く、THz帯で評価できるバルク水との違いが明らかになると、反射分光などを利用して非破壊的に水分活性に相当する情報を得られる可能性が出てくる。そこで、食品中の水の動態を評価する手法として用いられている水分活性とTHz分光の関係について調査を行った。典型的なサンプルとして糖水溶液を用いて実験した結果、水分活性で分かる自由水は、THz分光法では水和水とみなされる水も一部含んだ水であることが分かった。また大腸菌増殖能とTHz分光法によるバルク水濃度の関係を調べたところ、バルク水濃度と大腸菌増殖に関係があることが示された。今回は考慮されなかった糖溶質による直接的な大腸菌への影響についても考える必要があるものの、THz分光法による水の質の観点から、大腸菌の増殖しやすい環境であるかの判別可能性を示唆する結果を得た。 また、5 THz以上の高周波側のTHz分光スペクトルを利用することで、豆苗中のデンプンの定量分析が可能であることが分かった。さらに、サツマイモの加熱過程でもデンプンの変化をモニタリングできることが分かり、ピークの帰属は明確になっていないものの、デンプンが糖に分解される過程が計測できていることを示す結果を得た。この実験では破壊検査による測定方法を採用しているが、より簡便で迅速な測定方法を開発することで、農産物のポテンシャルをデンプン量で推定するという新しい品質評価法が提案できるものと考えられる。 一方、メタマテリアルを用いたセンシング手法は基板の干渉とメタマテリアルの共鳴を組み合わせて上手く使うことで、感度向上が見込まれる知見を得た。基板の材質や厚みとの関係を電磁界解析や実験を通じて明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はテラヘルツ分光の食品・農産物品質評価への応用を目指している。当初の基礎的な水の議論から、今年度は細菌が利用する水の状態を判別できる可能性を示すことができたことや、新しい品質評価項目としてデンプンに着目することができた点は、本研究が順調に進捗していることを表していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度は、総花的に研究を展開するのではなく、これまでの研究を総括する方向で進める。特にデンプンについては貯蔵時間や加工におけるデンプンの糖化に関する知見を深める。また、鮮度については現在進捗中のレタスの透過測定の結果から固層、水層、空気層の3層の割合を定量的に評価する手法を確立して研究成果をとりまとめる。一方で、テラヘルツ波が農産物にどのような影響を与えるかは、応用を考える上で不可欠である。今年度は他機関の高強度テラヘルツ光源を扱える機会があることから、照射影響についての知見も収集し、今後の農業・食品分野へのテラヘルツ応用研究への橋渡しをする予定である。
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