2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism regulating expression of estrous behavior in ruminants
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16H05014
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大蔵 聡 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20263163)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 応用動物 / 行動学 / 獣医学 / 畜産学 / 神経科学 / ヤギ / エストロジェン / 発情行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの受胎率の低下は、微弱発情や無発情などの発情行動の異常に起因する。本研究では、発情行動の誘起に第一義的役割を果たすエストロジェン(E)の受容体(ER)発現をコンディショナルにノックアウトできる遺伝子改変ヤギを、ゲノム編集技術とアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを活用して作出する。この動物をモデルとして用いて、反芻家畜の発情行動を制御する神経機構の局在を同定し、その分子メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、これまでに引き続き、発情行動を任意のタイミングで誘起するため、卵巣除去シバヤギにプロジェステロンおよびEを処置して発情行動を誘起するプログラムを構築し、発情行動特異的な指標(行動量、発声、尾振り、交尾行動など)の定量と、血中黄体形成ホルモン(LH)濃度の測定を行った。その結果、行動量の増加がLHサージに先行して起こり、この時間的相関関係は無発情を示した個体においても顕著であったことから、発情に伴う行動量の増加は動物の発情を評価する定量的指標となることが明らかとなった。 また、ゲノム編集技術を用いて、ヤギER遺伝子(ESR1)座にloxP配列を導入した遺伝子改変ヤギ(ESR1-floxedヤギ)を作出することを最終的な目的として、RACE法によりヤギESR1遺伝子mRNAの塩基配列および推定アミノ酸配列を同定した。その結果、ヤギESR1遺伝子mRNAには少なくとも2つのバリアント(3,836および4,353塩基)が存在することが明らかとなった。今後、ヤギESR1のゲノム構造を明らかにすることを試みる予定である。 さらに、より高効率な遺伝子改変ヤギの作出のために受精卵エレクトロポレーション法を用いたゲノム編集技術の導入を試みた。本年度は、シバヤギの1細胞期胚を効率的に採取するためのホルモン処置および卵管内受精卵の採取法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、発情行動誘起モデルの構築と発情行動の定量化を行うことを目的とした。これまでに、卵巣除去シバヤギを用いてプロジェステロンおよびEの投与により発情行動を誘起する条件設定により発情行動誘起プログラムの最適化を行い、モデル実験系の構築が完了した。このモデルを用い、発情行動特異的なパラメーター(行動量、発声、尾振り、交尾行動など)の定量と、その背景となる神経内分泌指標(血中LH濃度、性ステロイドホルモン濃度など)の経時変化を調べたところ、発情に伴う行動量の増加が発情を評価する定量的指標となることを明らかにできた。 本研究では、研究第2年度までにヤギ胎仔繊維芽細胞を用いてゲノム編集技術による相同組み換えを利用し、ESR1遺伝子座にloxP配列を導入した細胞系を樹立することを予定していた。現在のところ、ヤギESR1遺伝子座のゲノム構造情報の取得に時間を要していることから、ESR1遺伝子座にloxP配列を導入した細胞系の樹立には至っていない。次年度は、本年度に引き続いてESR1遺伝子座にloxP配列を導入した細胞系の樹立をめざす。また、ヤギにおいてより効率的にゲノム編集を実施し、遺伝子改変個体を作出できる技術として受精卵エレクトロポレーション法に着目し、マウスやブタにおけるゲノム編集が報告されている同法を本研究の目的である遺伝子改変ヤギ作出に導入することを試みた。受精卵エレクトロポレーション法では、1細胞期胚を用いてゲノム編集を行うため、ヤギの1細胞期胚を効率的に採取する必要がある。本年度は、ヤギの過排卵処置、オスとの交配のタイミング、卵管内受精卵を効率的に回収するタイミングなどの検討を行い、受精卵エレクトロポレーション法をヤギに適用するための基盤技術の最適化に着手した。次年度の早期にこれを完了し、ヤギ受精卵のゲノム編集技術の確立をめざす。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ゲノム編集技術によりヤギESR1遺伝子座にloxP配列を導入した細胞系を樹立したのちに、体細胞クローン技術を利用してESR1遺伝子座にloxP配列を導入したESR1-floxedヤギを作出し、さらにCre/loxPシステムによりコンディショナルにESR1をノックアウトして反芻家畜の発情行動を制御する神経機構の局在を解明することをめざしている。それぞれの技術をヤギに適用する手法は確立されつつあり、これまでに確立した発情に伴う行動量増加を指標とした発情行動の定量的評価系と組み合わせて、発情行動を制御する神経機構の解明に全力をあげる。また、体細胞クローン技術による個体作出を経ることなく、より高効率な遺伝子改変ヤギ作出が可能となる受精卵エレクトロポレーション法によりゲノム編集を行うことを試み、目的の遺伝子改変ヤギの作出を加速化させる。
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[Presentation] The role of calcitonin receptor signaling in the regulation of GnRH pulse generator activity in goats2019
Author(s)
Kitagawa, Y., Sasaki, T., Morishima, A., Tatebayashi, R., Morita, Y., Matsuyama, S., Inoue, N., Uenoyama, Y., Tsukamura, H., Ohkura, S.
Organizer
日本畜産学会第125回大会
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