2016 Fiscal Year Annual Research Report
黒毛和種における遺伝性疾患の原因遺伝子解明と遺伝子診断法の確立
Project/Area Number |
16H05016
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
国枝 哲夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80178011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揖斐 隆之 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70335305)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黒毛和種 / 遺伝性疾患 / 育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、畜産業に大きな経済的損失を与えている黒毛和種の遺伝性疾患の一つである下顎短小・腎低形成症の原因遺伝子を同定し、疾患の発生を予防するための遺伝子診断法確立をすることを目的とする。本疾患の症個体の多くは死産または出生後早期に腎機能不全により死亡するが、現時点では発生予防のための遺伝子診断法は確立されていない。そこで本研究は、本疾患の発症個体を含む家系のDNAサンプルを用いた連鎖解析および網羅的なゲノム配列の解析により疾患の原因となる遺伝子上の変異を特定し、その変異を検出することで保因個体を同定する遺伝子診断法を確立することを目的とする。 これまでに、連鎖解析により本疾患の遺伝子が第19染色体に存在することを明らかとしているが、より詳細な染色体の位置を特定するために、本年度の研究では発症個体および血縁関係にある多数の個体のについて、当該領域に存在するSNPs等のマーカーをタイピングすることで、疾患原因遺伝子の染色体上の位置をより正確に特定することを試みた。その結果、原因遺伝子のウシ染色体上での位置が数Mb以下に正確に特定された。 次に上記の原因遺伝子の存在が予測される領域に存在する多数の機能的遺伝子について、データベースの情報から、本疾患に関連する可能性があるかについて検討した。すなわち、ヒトやモデル動物において、それらの遺伝子の機能が欠損した場合に、ウシの疾患と類似した腎臓の形成に関わる異常が出現するか、遺伝子の発生過程における発現パターンから腎臓の形成に関わる可能性があるかについて検討した。その結果、本疾患に関与する可能性のある複数の候補遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では下顎短小・腎低形成症の原因遺伝子を同定し、疾患の発生を予防するための遺伝子診断法確立をすることを目的とし、本年度は、原因遺伝子の染色体マッピングと腎形成に関わる機能面からの原因遺伝子の推定を計画した。 本年度の研究では、原因遺伝子の染色体マッピングについては、発症個体を含む黒毛和種の家系のサンプルを用いた連鎖解析から、疾患原因遺伝子の染色体上の位置を正確に特定することができ、目的は予定通りに達成している。また、腎形成に関わる機能面からの原因遺伝子の推定については、主にデータベースを用いた検索が中心となったが、当該領域に存在する,腎形成に関わり、本疾患の原因となる可能性のある候補遺伝子を特定することができ、おおむね目的は達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において当初計画の目的はおおむね達成できたことから、次年度も基本的に当初計画に沿って、原因遺伝子の特定と変異の同定に取り組むことを予定している。具体的には、上記の様にすでに疾患原因遺伝子の染色体上の位置と、それら遺伝子の腎形成関わる機能から候補遺伝子が特定されていることから、これらの候補遺伝子について、その塩基配列を解析することで疾患の原因となる遺伝子上の変異を特定することを試みる。すなわち、これらの候補遺伝子及びその周辺領域について塩基配列を決定し、その配列を解析することで正常個体と発症個体の間で異なる配列をもつ変異を特定する。これらの変異のうち、当該遺伝子の産物であるタンパク質の機能に大きな影響を与える可能性のある変異について、さらに黒毛和種集団中の多数の個体についてそれらの塩基配列を比較することで、発症個体に特異的な変異を同定することを予定している。
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