2017 Fiscal Year Annual Research Report
IgY欠損鶏を用いた新規アプローチによる鳥類の母子免疫機構の解明
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16H05020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村井 篤嗣 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10313975)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 畜産学 / ニワトリ / IgY欠損 / 卵母細胞 / 卵黄 / 母子免疫 / 抗体 / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度選抜されたIgYを欠損したニワトリの卵母細胞で高発現するIgY受容体候補遺伝子を対象にして、より高精度に遺伝子発現レベルを測定するとともに組織における発現局在を調査した。 (1) ファブリキウス嚢の外科的除去によりIgY欠損鶏を作出した。正常群とIgY欠損群の卵母細胞におけるIgY受容体候補遺伝子の発現レベルをリアルタイムPCR法で測定した。プロテインCとの結合活性を持つPROCRの発現レベルは卵母細胞の発育ステージが早期であるほど発現レベルが高いことが判明したが、正常群とIgY欠損群との間に差は見られなかった。 (2) 既知IgY受容体であるFcRYの卵母細胞およびに卵母細胞を囲む卵胞膜細胞層における発現量は正常群とIgY欠損群との間に差は見られなかった。しかし、卵胞膜細胞層では約90倍もの高レベルでFcRYが発現することが判明した。 (3) LDL受容体ファミリーに分類される機能未知のLRP2Lの卵母細胞における発現レベルは正常群とIgY欠損群との間に差は見られなかった。しかし、LRP2Lは卵母細胞以外の組織層における遺伝子発現は極めて低レベルで、卵母細胞で特異的に発現する遺伝子であることが判明した。 (4) LRP2Lの配列を含む組変え型LRP2Lを作出してウサギに免疫することで特異抗体を得た。卵胞全体の薄切切片に対する免疫染色を行った所、タンパク質レベルでのLRP2Lは卵母細胞膜で特異的に発現することが判明した。 以上から、卵母細胞を含む卵胞組織で特徴的な発現局在を示すFcRYとLRP2Lに着目して、調査を継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は平成28年度に引き続きIgY欠損鶏の育成率が悪く、再度IgY欠損鶏の作出を行った。そのため、平成29年度の経費を平成30年度に繰り越して本研究課題を実施した。最終的に、平成29年度当初の実施計画をほぼ達成することができた。IgY欠損鶏と通常鶏の卵母細胞で遺伝子発現レベルが異なる遺伝子を選抜し、それら遺伝子の発現レベルと組織局在を調査した所、2つの有力な候補遺伝子を選抜することができた。よって、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
IgY欠損鶏の卵母細胞で遺伝子発現が上昇する複数の候補遺伝子の中から2つの遺伝子を絞り込むことができた。今後は、選抜された2つの受容体候補遺伝子がIgYとの結合活性を実際に有するのかを調査する。また、これら2つの候補遺伝子をタンパク質レベルで大量に発現させて、特異的抗体の作出に用いる。得られた特異抗体を使って、それぞれの受容体としての機能を中和化できるかを調査し、個体レベルでの機能解析を進めることで、さらに候補を絞り込む。
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Research Products
(4 results)