2016 Fiscal Year Annual Research Report

マダニ制圧へ向けたマダニの抗酸化分子を標的とするワクチンとRNA殺ダニ剤の創出

Research Project

Project/Area Number	16H05028
Research Institution	Kagoshima University
Principal Investigator	田仲哲也鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (00322842)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	宮田健鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (20448591) 黒田俊一大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60263406)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	マダニ / ペルオキシレドキシン / フェリチン / グルタチオンSトランスフェラーゼ / 過酸化水素
Outline of Annual Research Achievements	[全体構想] マダニにとって必須の生存基盤が宿主動物からの吸血・消化にあり、血液消化産物中に含まれるヘム代謝の過程で多量の鉄や過酸化物がマダニ体内に放出する可能性が考えられる。鉄や過酸化物から被る酸化ストレスへの応答、さらには酸化還元バランスのコントロールは、吸血や産卵、また宿主への寄生適応の成否を左右する重要な機構である。その詳細については解明されていないが、研究代表者らはその重要な機構を担う抗酸化分子として、フェリチン、ペルオキシレドキシン、グルタチオンSトランスフェラーゼ遺伝子を同定することに成功した。本研究では、マダニの酸化還元バランス制御機構の特性を明らかにし、マダニ制圧開発研究に新知見を提供すると同時に、それらを標的とした抗マダニワクチンとRNA殺ダニ剤を創出することを目標とする。 [今まで得られた研究実績] 活性酸素種(ROS)であるヒドロキシラジカルは、生体高分子に酸化障害を引き起こし、ROSの中で半減期が比較的長い過酸化水素を制御する方が生物にとって効率的である。したがって、過酸化水素の制御は、マダニの発育に不可欠である。そこで、過酸化水素消去への関与が考えられるペルオキシレドキシン(Prx2)に着目し、Prx2の吸血・産卵に果たす役割について解析を行った。その結果、マダニの吸血に伴いPrx2の発現量が増加し、特に中腸と卵巣において顕著であった。さらに、RNA干渉法によるPrx2遺伝子ノックダウンを行い、Prx2のマダニでの吸血・産卵に果たす役割並びに過酸化水素濃度への影響を解析した。その結果、Prx2遺伝子をノックダウンしたマダニでは、飽血体重、卵重量、産卵数が対照群に比べ有意に減少し、マダニの過酸化水素濃度も増加傾向を示した。以上の結果より、Prx2は、中腸並びに卵巣において、マダニの吸血・産卵や過酸化水素濃度の制御に重要な分子であることが考えられた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 当初の計画通り、吸血期でのマダニにおけるペルオキシレドキシンの遺伝子並びにタンパク質の発現解析を遂行することができた。また、本研究成果は、投稿論文としてまとめ、発表済みである。
Strategy for Future Research Activity	本年度の研究成果により、ペルオキシレドキシンが、マダニの吸血・産卵並びに過酸化水素濃度の制御に重要な分子であることが示唆された。当初の計画通り、次の段階は、組換えペルオキシレドキシンで免疫した宿主動物でマダニを吸血させ、ワクチネーションによるマダニの吸血・産卵に及ぼす影響を評価し、ペルオキシレドキシンがワクチン標的候補分子になるか検証していく。また、マダニのグルタチオンSトランスフェラーゼについても吸血・産卵に果たす役割について検討を行う。