2016 Fiscal Year Annual Research Report
GAPDHカスケードを基軸としたストレス性精神疾患の発症機序解明と治療戦略の構築
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16H05029
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中嶋 秀満 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30405360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20244668)
乾 隆 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (80352912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | GAPDH / ストレス性精神疾患 / 行動薬理 / 獣医薬理 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患の発症機序は未だ不明であるが、その背景には過度の身体的・社会的ストレスが指摘されている。また近年、ストレス性精神疾患の発症に、脳内酸化ストレスの産生が関与することが報告されている。申請者はこれまでに、酸化ストレス性神経疾患において、多機能酵素グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)が、2つのカスケード(凝集経路と核移行経路)を介して神経細胞死を惹起することを明らかにした(GAPDHカスケード)。そこで本研究では、ストレスモデルにおける脳内GAPDHカスケードの病理変化を探索し、申請者が開発した神経細胞特異的ノックダウン-アデノ随伴ウイルス(AAV2)レスキュー法を用いた行動試験により責任脳部位を同定することで、ストレス性精神疾患の新規発症機序の解明と、薬物治療戦略を構築することを目的とする。 H28年度の実施計画として、1)ストレス性精神疾患モデルマウスの構築と2)脳内酸化ストレス産生とGAPDHカスケード発動の病理変化を検証し、脳内GAPDHカスケードとストレス性精神疾患の責任部位を解明を同定し、各カスケードの阻害剤を用いて治療効果(抗ストレス作用)の検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)については、各社会性ストレス評価系のセットアップ(オープンフィールドテスト・ソーシャルインタラクションテスト・恐怖条件付け試験・尾懸垂テスト)を実施し、ストレスモデルとして、母子分離ストレスと個別飼育モデル(社会性孤立)の2つのモデル構築を実施した。各ストレス単独ではストレス性精神疾患を外挿できる行動変化は軽微であり、薬物評価を実施するため、母子分離後に個別飼育する新しいストレスモデルの構築をした。2)に関しては、先行して物理的ストレスモデル(拘束水浸ストレス)マウスを作製し、特に海馬で顕著な酸化ストレス(ヒドロキシラジカルと一酸化窒素)の発生を免疫染色法で確認し、またその際、海馬CA1錐体細胞と歯状回顆粒細胞におけるGAPDH核移行を免疫染色法と核ウエスタンブロットで確認した。同部位におけるGAPDH凝集はほとんど認められなかった。従って、少なくとも拘束水浸ストレスモデルでは、GAPDH核移行経路が主に関与することが示唆された。またIn vivo RNA干渉法とGAPDH核移行阻害剤(CGP3466B)を用いて海馬神経細胞GAPDHの核移行を阻害したところ、尾懸垂テストにおいて有意なうつ様行動改善効果が改善された。現在、本知見を纏め、論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、母子分離+個別飼育ストレスにより、薬物評価にたる行動変化を示す社会性ストレスモデルの構築を目指す。また、海馬においてGAPDH核移行経路の発動が認められたことから、拘束水浸ストレスモデルをポジティブコントロールとして、GAPDH核移行後のシグナル伝達経路として、転写因子p53とポリADPリボシル化反応に注目し、うつ様行動に至るエピジェネティック機能の解析をChIP法を用いて解析し、RNA干渉法と核移行阻害剤による抗ストレス効果の分子メカニズムを検証する。
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Research Products
(10 results)